借金の返済が困難になり自己破産を検討する際、持ち家を手放したくないと考える方は少なくありません。
結論として、自己破産をすると原則として持ち家は処分されます。
しかし、少ない可能性ではあるものの、一定の条件下では住み続けられる可能性があります。
また、直ちに追い出されるというわけではなく、賃貸物件を探す猶予は十分にあります。
本記事では、自己破産における持ち家の扱いと、家に住み続けるための対処法について詳しく解説します。
目次
自己破産すると持ち家は処分される

自己破産を申し立てると、持ち家は原則として処分の対象となります。
破産手続きは、破産者の財産を現金化して債権者に配分する仕組みだからです。
住宅ローンの有無にかかわらず、一定の価値がある不動産は破産財団に組み入れられます。
破産法では、99万円を超える価値のある財産は原則として換価処分されると定められています。
持ち家は通常この基準を大きく超えるため、手放さざるを得ない状況になります。
競売で売れない場合は住み続けられる可能性あり
持ち家が競売にかけられても、買受人が現れなかった場合は住み続けられる可能性があります。
裁判所が3回の入札を実施しても購入者が現れず、売却見込みがないと判断されると競売は取り消されるからです。
建物の状態が著しく悪い場合や、立地条件が極めて悪い場合など、市場価値が低い不動産では売れ残るケースがあります。
老朽化が進んだ建物、再建築不可の物件、接道義務を満たしていない土地などは買い手がつきにくい傾向にあります。
ただし、この方法は確実性に欠けるため、あくまで例外的なケースと考えるべきです。
自己破産で持ち家が処分される流れ

自己破産で持ち家が処分される際は、法律に定められた手順に従って進められます。
競売手続きは、開始決定、執行官による調査、入札公開、売却許可決定という4つの段階を経て進行します。
1.自己破産手続開始の決定
裁判所が破産手続開始を決定すると、持ち家を含む財産の処分権は破産管財人に移ります。
破産管財人は裁判所が選任する弁護士で、破産者の財産を管理して債権者に配分する役割を担うからです。
住宅ローンが残っている場合、金融機関は抵当権に基づいて競売を申し立てることができます。
破産手続開始決定から1ヶ月から3ヶ月後に、裁判所から執行官と評価人が訪問する日程が決まります。
開始決定の時点で、破産者は持ち家の管理処分権を失うため、勝手に売却することはできなくなります。
2.執行官による調査
競売開始決定の後、裁判所から執行官と評価人が自宅を訪問して調査を実施します。
競売に必要な情報を収集し、適正な売却基準価額を算出するためです。
執行官は建物の外観や室内の写真撮影を行い、現況調査報告書を作成します。
評価人は不動産鑑定士などの専門家で、物件の市場価値を査定して評価書を作成します。
調査には破産者の立ち会いが必要で、拒否すると強制的に実施される可能性があります。
調査結果に基づいて、裁判所が売却基準価額と入札スケジュールを決定します。
3.競売情報の公開と入札
裁判所が売却基準価額を決定すると、競売物件の情報がインターネット上で公開されます。
不動産競売物件情報サイトなどに物件の詳細が掲載され、広く購入希望者を募るためです。
入札期間は通常1週間から2週間程度設けられ、誰でも入札に参加できます。
最も高い金額で入札した者が落札者となり、その金額で物件を購入する権利を得ます。
競売では市場価格の7割程度の金額で落札されることが一般的です。
入札が成立しない場合は、価格を見直して最大3回まで入札が繰り返されます。
4.裁判所による売却許可決定
入札で最高価格を提示した者が現れると、裁判所は売却許可決定を出します。
売却許可決定は、落札者に物件の所有権を移転するための法的手続きです。落札者が代金を納付すると、所有権が正式に移転します。
所有権移転後、破産者は一定期間内に物件を明け渡す必要があります。
明け渡しに応じない場合は、強制執行により退去させられることになります。
売却代金は住宅ローンの返済と債権者への配当に充てられます。
自己破産をした後はいつまで家に住める?

自己破産後に持ち家に住める期間は、処分方法によって異なります。
この期間を有効に活用して、次の住まいを探す準備を進めることが重要です。
競売または任意売却手続きが完了するまで
自己破産を申し立てた後も、競売または任意売却の手続きが完了するまでは家に住み続けられます。
所有権が買主に移転するまでは、法的に居住する権利が認められているからです。
破産手続開始決定が出ても、すぐに退去を求められることはありません。住宅ローンの返済も停止しますが、居住自体は継続できます。
ただし、売却が確定した後は速やかに引っ越しの準備を始める必要があります。
任意売却の場合:購入者が見つかり次第
任意売却を選択した場合、購入者が見つかり売買契約が成立した時点で退去が必要になります。
任意売却は通常の不動産売買と同様の手続きで進められるからです。
買主との交渉により、引き渡し時期をある程度調整できる可能性があります。一般的には契約から1ヶ月から2ヶ月程度の猶予が設けられることが多いです。
任意売却では、売却代金から引っ越し費用の一部を捻出できる場合もあります。
債権者との交渉次第で、10万円から30万円程度の引っ越し費用を認めてもらえることがあります。
競売の場合:半年~1年間程度
競売手続きの場合、開始決定から物件の明け渡しまで半年から1年間程度かかります。
競売は裁判所が関与する手続きであり、法定の期間や手順を踏む必要があるからです。
執行官の調査、入札公告、入札期間、売却許可決定など、複数の段階を経て進行します。
落札者が代金を納付して所有権が移転した後、退去を求められます。競売では引き渡し時期の調整ができないため、落札後は速やかに退去する必要があります。
退去に応じない場合は、強制執行により荷物ごと搬出されることになります。
自己破産後も持ち家に住むための対処法

自己破産をしても持ち家に住み続ける方法はいくつか存在します。
自己破産を検討する段階で、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
親族名義の持ち家なら住み続けられる
持ち家が配偶者や親など家族名義である場合、自己破産をしても住み続けることができます。
破産手続きで処分されるのは破産者本人名義の財産のみだからです。
家族名義の不動産は破産財団に組み入れられず、競売の対象にもなりません。
ただし、自己破産を回避する目的で破産直前に家族へ名義変更することは財産隠しに該当します。
財産隠しは免責不許可事由となり、借金の返済義務が残ってしまう重大なリスクがあります。
持ち家を売却しリースバックを受ける
リースバックを利用することで、自己破産後も同じ家に住み続けられる可能性があります。
自宅を不動産会社に売却した後、賃貸借契約を結んで住み続ける仕組みだからです。
売却によって持ち家は自分の資産ではなくなりますが、賃貸物件として居住を継続できます。
リースバックを活用すれば、引っ越しをせずに生活環境を維持したまま自己破産手続きを進められます。
子どもの学校や職場への通勤など、生活基盤を変えずに済むことが大きなメリットです。
経済状況が改善した際に、元の持ち家を買い戻せる可能性が残ることも、リースバックの利点の一つです。
自由財産の拡張を申し立てる
自由財産の拡張が認められれば、一定の財産を手元に残すことができます。
自由財産の拡張とは、破産者の生活再建に必要な財産を裁判所が認める制度だからです。
通常、99万円以下の現金や差し押さえ禁止財産が自由財産として認められています。
裁判所に申し立てることで、この範囲を拡張して特定の財産を残せる場合があります。
ただし、持ち家のような高額な不動産が自由財産の拡張として認められるケースは極めて稀です。
破産管財人の意見を聴いた上で、裁判所が拡張の可否を決定します。
自己破産したら次の住まいはどうする?

自己破産で持ち家を失った後は、新しい住まいを確保する必要があります。
早めに行動を起こすことで、落ち着いて新生活をスタートできます。
売却許可決定が出る前に賃貸物件を探す
競売の売却許可決定が出る前から、積極的に賃貸物件を探し始めるべきです。
売却許可決定後は退去までの時間が限られるため、早めの準備が必要です。
自己破産の手続き中であっても、賃貸契約を結ぶこと自体は法律上問題ありません。
ただし、保証会社の審査がある物件では、信用情報の問題で契約できない可能性があります。
家賃の支払い能力があることを証明できれば、多くの物件で契約は可能です。
不動産屋に審査に通りやすい物件を紹介してもらう
不動産会社に事情を説明して、審査に通りやすい物件を紹介してもらうことが効果的です。
保証会社を使わない物件や、個人オーナーの物件は比較的審査が緩やかだからです。
信販系の保証会社は信用情報を照会するため、自己破産後は審査に通りにくくなります。
一方、家賃保証会社の中には独自の審査基準を持つ会社もあり、現在の収入を重視して判断します。
敷金や礼金を多めに用意することで、オーナーの不安を軽減できる場合もあります。
自己破産以外の持ち家を守る債務整理の方法

持ち家を手放したくない場合は、自己破産以外の債務整理を検討することが重要です。
任意整理や個人再生であれば、持ち家を維持しながら借金問題を解決できる可能性があるからです。
任意整理
任意整理は、債権者と直接交渉して返済条件を見直す債務整理の方法です。
裁判所を介さない私的な整理のため、手続きが比較的簡単で周囲に知られにくいです。
将来利息のカットや長期分割払いの交渉により、月々の返済負担を軽減できます。持ち家などの財産を処分する必要がなく、そのまま所有し続けることができます。
ただし、元本は原則として減額されないため、大幅な借金減額は期待できません。
安定した収入があり、3年から5年程度で完済できる見込みがある場合に適しています。
個人再生
個人再生は、裁判所に再生計画を提出して借金を大幅に減額してもらう手続きです。
借金を5分の1から10分の1程度に圧縮し、原則3年間で返済する計画を立てる制度です。
住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンを返済し続けながら持ち家を維持できます。
住宅ローン以外の借金を大幅に減額できるため、家計の負担を大きく軽減できます。
例えば、住宅ローン以外に500万円の借金がある場合、個人再生により100万円程度まで減額できる可能性があります。
減額された100万円を3年間で返済すると、月々の返済額は約2万8000円となり、大幅に負担が軽減されます。
ただし、継続的で安定した収入があることが利用条件となります。
持ち家を任意売却する場合の注意点

任意売却を選択する場合は、タイミングと債権者との調整が重要です。
適切な時期と方法で任意売却を行わないと、期待した効果が得られない可能性があるからです。
破産手続開始決定が出たら任意売却ができない
破産手続開始決定が出た後は、原則として任意売却ができなくなります。
開始決定により財産の管理処分権が破産管財人に移るため、破産者が勝手に売却できなくなるからです。
任意売却を希望する場合は、破産を申し立てる前に実施する必要があります。
ただし、破産管財人が選任された後でも、管財人の判断で任意売却が行われる場合があります。
破産前に任意売却を行う場合、売却代金の使途について弁護士と相談することが重要です。
不適切な使い方をすると、免責不許可事由に該当する可能性があります。
債権者との調整が必要となる場合も
任意売却を行うには、抵当権者である債権者の同意が必要です。
住宅ローンが残っている不動産は、抵当権が設定されているため債権者の許可なしに売却できないからです。
売却代金が住宅ローン残債を下回る場合、債権者に損失を被らせることになります。
そのため、債権者は売却価格が適正かどうかを慎重に審査します。
不当に安い価格での売却は認められず、市場価格に近い金額での売却が求められます。
複数の債権者がいる場合は、それぞれとの調整が必要となり、手続きが複雑化します。
まとめ 自己破産で持ち家に住み続けられるケースはまれ

状況によっては住み続ける方法も存在しますが、自己破産で持ち家を失うことは避けられない場合が多いです。
家族名義の持ち家であれば処分されず、リースバックを活用すれば賃貸として居住を継続できます。
競売で売れない場合は結果的に住み続けられる可能性もありますが、確実性はありません。
持ち家を維持したい場合は、任意整理や個人再生など自己破産以外の債務整理を検討することが重要です。
自己破産を検討している場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談することを強くおすすめします。
弁護士は、あなたの状況を総合的に分析し、持ち家を守るための最適な方法を提案してくれます。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

