任意整理を検討している方の中には、保証人への影響が気になって踏み切れない方も多いのではないでしょうか。
任意整理を行うと、保証人に対して一括請求が行われる可能性があります。
しかし、任意整理は保証人がついている借金を対象外にすることで、迷惑を掛けずに済ませることができるのです。
本記事では、任意整理が保証人に与える影響と、迷惑をかけないための具体的な方法を詳しく解説します。
保証人との関係を守りながら借金問題を解決するための知識を身につけましょう。
目次
任意整理をすると保証人が借金を負うことになる

任意整理を行うと、保証人が残りの借金を負担しなければならない状況が発生します。
債務者が返済できなくなった時点で、債権者は保証人に対して請求する権利を持つからです。
そのため、保証人に対して残債務の一括請求が行われるのが一般的です。
減額前の債務が保証人に対して請求される
債務者が任意整理で将来利息をカットした場合でも、保証人には減額前の金額が一括で請求されます。
例えば、元本100万円に対して将来発生するはずだった利息30万円をカットした場合、債務者は100万円を分割で返済します。
一方で債権者は、保証人に対して当初の130万円を一括で請求する権利を保持しています。
保証人は債務者が得た減額のメリットを受けられず、当初の契約通りの金額を負担しなければなりません。
3つの債務整理における保証人への影響の違い

債務整理には任意整理・個人再生・自己破産の3つがあり、それぞれ保証人への影響が異なります。
手続きの性質や法的効力の範囲が違うため、保証人が負う責任の程度も変わるからです。
保証人への影響を考慮して、最適な債務整理方法を選択しましょう。
任意整理は保証人への影響が少ない債務整理
任意整理は3つの債務整理の中で、保証人への影響を最も抑えられる方法です。
債権者と個別に交渉して対象を選べるため、保証人がついている借金を整理対象から外せるからです。
以下、3つの債務整理方法の特徴を解説します。
任意整理の特徴
任意整理は裁判所を通さずに債権者と直接交渉する手続きです。
整理する債権を自由に選べるため、保証人がいる借金は対象外にして通常通り返済を続けられます。
保証人への配慮が可能な点が、任意整理の大きなメリットです。
個人再生の特徴
個人再生は裁判所を通じて借金を大幅に減額する手続きです。
全ての債権が対象となるため、保証人がいる借金も必ず整理対象に含まれます。
減額された部分は保証人に請求されるため、事前の相談が不可欠です。
自己破産の特徴
自己破産は借金を全額免除してもらう手続きです。
個人再生と同様に全ての債務が対象となり、保証人への請求を避けられません。
債務者が免責を受けても保証人の義務は残るため、保証人は全額を返済しなければなりません。
自己破産によって免除された債務は、そのまま保証人の負担になります。
保証人への影響が最も大きい債務整理方法といえます。
任意整理で保証人に迷惑をかけない方法

任意整理を行う際には、保証人への影響を最小限に抑える工夫が可能です。
ここでは、保証人への影響を避けるための3つの方法を紹介します。
保証人をつけている借金を任意整理対象外にする
最も効果的な方法は、保証人がついた借金を任意整理の対象から外すことです。
例えば、クレジットカード3社と消費者金融2社から借入がある場合、保証人がいる消費者金融1社を対象外にできます。
対象外にした借金は従来通りの契約で返済を続けるため、保証人に請求が行くことはありません。
日本司法書士会連合会の調査では、任意整理利用者の約70%が一部債権を対象外にしています。
保証人への影響を完全に避けられる最も安全な方法です。
出典:日本司法書士会連合会「債務整理相談の実態報告」
保証人と連名で任意整理をする
保証人と一緒に任意整理を行う方法もあります。
債務者と保証人が同時に債権者と交渉すれば、双方とも将来利息のカットや分割払いの条件で合意できるからです。
この方法では、保証人に一括請求が行かず、債務者と同様の条件で返済計画を立てられます。
ただし、保証人も信用情報に事故情報が登録される点に注意が必要です。
双方の将来計画を考慮した上で、この方法を選択しましょう。
どうしても外せないときは事前に保証人に連絡
保証人がいる借金を任意整理対象に含めざるを得ない場合は、必ず事前に保証人に連絡しましょう。
突然の一括請求で保証人が困らないよう、状況を説明して理解を得ることが大切だからです。
連絡する際には、任意整理を行う理由、保証人に請求される可能性のある金額、今後の返済計画を具体的に伝えます。
保証人が返済資金を準備する時間的余裕を持てるよう、できるだけ早めに相談することが重要です。
信頼関係を維持するためにも、誠実な対応を心がけましょう。
連帯保証人と保証人の違いは「権利」の有無

連帯保証人と通常の保証人には、法律上の権利において大きな違いがあります。
民法では、保証人に「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」という3つの権利を付与しています。
一方、連帯保証人は主債務者とほぼ同等の責任を負うため、これらの権利を行使できません。
保証人が持つ3つの権利
以下、保証人が持つ3つの権利について詳しく解説します。
催告の抗弁権
催告の抗弁権とは、債権者が保証人に請求してきた際に「まず主債務者に請求してください」と主張できる権利です。
民法第452条に規定されており、債権者は保証人への請求前に主債務者に対して請求しなければなりません。
例えば、債権者がいきなり保証人に返済を求めてきた場合、保証人は「先に債務者本人に請求してください」と拒否できます。
債務者に資力がある限り、保証人は直ちに支払う義務を負いません。
検索の抗弁権
検索の抗弁権とは、主債務者に弁済能力があることを証明して、まず債務者の財産から回収するよう求められる権利です。
民法第453条に定められており、債務者に財産があれば保証人は支払いを拒めます。
保証人が「債務者には預金や不動産があるので、そちらから回収してください」と主張した場合、債権者は債務者の財産を差し押さえなければなりません。
ただし、保証人が債務者の財産を具体的に示す必要があります。
分別の利益
分別の利益とは、保証人が複数いる場合に、各保証人が頭数で割った金額のみを負担すればよいという権利です。
民法第456条に規定されており、保証人の負担を公平に分散させる仕組みです。
例えば、300万円の借金に対して3人の保証人がいる場合、各保証人は100万円ずつ負担すればよいことになります。
債権者は各保証人に対して全額を請求できず、それぞれの持分のみを請求できます。
連帯保証人には抗弁権がない
連帯保証人は、通常の保証人が持つ3つの権利を一切行使できません。
民法第454条により、連帯保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権が認められていないからです。
また、民法第458条により、連帯保証人には分別の利益もありません。
つまり、債権者は主債務者に請求せずに直接連帯保証人に全額を請求でき、連帯保証人はそれを拒否できません。
連帯保証人は主債務者とほぼ同等の責任を負うため、契約時には慎重な判断が必要です。
保証人が家族だった場合の影響

保証人が家族である場合、任意整理による影響は家庭全体に及ぶ可能性があります。
ここでは、家族が保証人だった場合に起こりうる具体的な影響について解説します。
家族に対して一括請求される
任意整理を行うと、保証人である家族に対して残債務の一括請求が行われます。
債権者は契約に基づいて保証人に請求する権利を持っており、家族であっても例外ではないからです。
例えば、200万円の借金を任意整理した場合、父親が保証人であれば父親に200万円の一括請求が届きます。
一括で支払えない場合、家族の給与や預金が差し押さえられる可能性もあります。
家族の老後資金や生活基盤に深刻な影響を与えかねません。
債務者が死亡しても保証人に請求
債務者が死亡した場合でも、保証人の返済義務は消滅しません。
保証債務は主債務者の生死に関わらず存続するため、保証人は引き続き返済責任を負うからです。
債務者が亡くなっても借金は相続人に引き継がれますが、相続人が相続放棄をすれば保証人が全額を負担することになります。
民法第896条により、相続人は相続を放棄できますが、保証人の義務には影響しません。
例えば、夫が死亡して妻が相続放棄をした場合、保証人である夫の兄弟が全額を返済しなければなりません。
保証人は債務者の死後も長期間にわたって返済を続ける可能性があります。
保証人も債務整理せざるを得なくなることも
保証人への請求額が大きい場合、保証人自身も債務整理を検討せざるを得ない状況に陥ることがあります。
一括請求された金額を支払えない保証人は、自己破産や個人再生を選択するケースが多いからです。
日本弁護士連合会の調査によれば、保証債務が原因で債務整理を行った人は年間約1万5千人います。
保証人が債務整理を行うと、保証人の信用情報にも事故情報が登録されます。
その結果、保証人は5年から10年間、新たなローンやクレジットカードの利用ができなくなります。
一人の債務整理が家族全体の経済状況に連鎖的な影響を及ぼす可能性があるのです。
出典:日本弁護士連合会「多重債務問題に関する実態調査」
任意整理と保証人についてよくある質問

任意整理と保証人に関しては、多くの方が同様の疑問を抱いています。
ここでは、特によく寄せられる質問について回答します。
任意整理をすると保証人になれない?
任意整理を行った本人は、一定期間は保証人になれません。
信用情報機関に事故情報が登録されるため、金融機関や貸金業者は保証人として認めないからです。
任意整理による事故情報の登録期間は、完済から約5年間です。
この期間中は、住宅ローンや奨学金などの保証人を依頼されても、審査で拒否される可能性が高くなります。
まとめ:迷惑かけたくない保証人の借金は任意整理から外す

任意整理は保証人に迷惑をかけずに借金を整理できる方法です。
保証人がついている借金を対象から外せば、保証人への請求を完全に避けられるからです。
どうしても保証人付きの借金を含めざるを得ない場合は、保証人と連名で任意整理をする方法や、事前に誠実に状況を説明する方法があります。
保証人が家族の場合は、一括請求によって家族の生活に深刻な影響が出る可能性があるため、特に慎重な対応が必要です。
借金問題で悩んでいる方は、保証人への影響を最小限に抑えながら解決できる任意整理を、専門家に相談しながら進めましょう。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

