「個人再生をしたら退職金は没収される?」
「会社に手続きのことを知られてしまうのでは?」
という不安を抱えている方も多いでしょう。
結論から言えば、個人再生をしても退職金の全額を受け取ることは可能です。
ただし退職金は財産として評価され、返済額の計算に影響を与えるため、正しい知識を持つことが重要です。
本記事では個人再生における退職金の扱い、見込額証明書の取得方法、会社にバレずに手続きを進める方法について詳しく解説します。
目次
個人再生をすると退職金はどうなる?

個人再生を申し立てた際、多くの方が最も心配するのが退職金の取り扱いです。
個人再生における退職金の扱いについて、具体的に見ていきます。
基本的に全額受け取れる
個人再生の手続きを行っても、退職金は基本的に全額を受け取ることができます。
自己破産の場合は一定額以上の財産が処分されますが、個人再生では財産を処分する必要がないからです。
将来退職する際に支給される退職金についても、差し押さえられたり減額されたりすることはありません。
ただし退職金は財産として評価されるため、返済額の計算に影響を与える点には注意が必要です。
つまり退職金そのものは守られますが、返済すべき金額の算定においては考慮されるということになります。
弁済額を決める基準の「清算価値」として計上される
個人再生では退職金の全額ではなく、一部の金額が「清算価値」として計上されます。
清算価値とは、もし自己破産をした場合「債権者に配当される財産の総額」を指す概念です。
個人再生では清算価値以上の金額を返済しなければならないというルールがあるため、退職金の評価額が高いほど返済額も増える可能性があります。
退職金の評価方法は、退職金を既に受け取っているか、退職予定があるか、現在在職中かによって異なります。
それぞれの状況における具体的な取り扱いを確認していきましょう。
すでに受け取っている場合の扱い
退職金を既に受け取っている場合、金額の4分の1が清算価値として計上されます。
たとえば800万円の退職金を受け取っている場合、200万円が財産として評価されるということです。
受け取った退職金を生活費などで既に使ってしまっている場合でも、評価額は変わりません。
退職金を受け取った後に個人再生を検討している方は、この点を理解しておく必要があるでしょう。
退職予定・退職済みの段階で受け取っていない場合
退職が決まっているものの、まだ退職金を受け取っていない段階では、退職金見込額の4分の1が清算価値として計上されます。
退職済みで支給待ちの状態も同様の扱いです。
この場合、会社から退職金見込額証明書を取得し、その金額をもとに計算を行います。
退職金の支給時期が個人再生の手続き中になる場合は、実際に受け取った金額で再計算されることもあります。
退職が間近に迫っている方は、タイミングにも注意が必要でしょう。
退職予定がない場合
現在在職中で退職の予定がない場合、退職金見込額の8分の1が清算価値として計上されます。
たとえば現時点で退職した場合の退職金見込額が1600万円であれば、200万円が財産として評価されます。
退職予定がない場合は評価額が最も低くなるため、返済額への影響も比較的小さくなるでしょう。
多くの個人再生申立者はこのケースに該当するため、8分の1という基準を覚えておくことが重要です。
ただし、勤続年数が長く退職金見込額が高額な場合は、8分の1でも大きな金額になることがあります。
個人再生における返済額の決まり方|いずれか多い金額が採用

個人再生では、借金総額が大幅に減額されますが、返済額は複数の基準によって決定されます。
3つの基準のうち最も高い金額が実際の返済額となるため、それぞれの基準を理解しておく必要があります。
最低弁済額
最低弁済額は、借金総額に応じて法律で定められた最低限の返済額です。
| 借金総額 | 最低弁済額 |
|---|---|
| 100万円未満 | 借金総額の全額 |
| 100万円以上500万円未満 | 100万円 |
| 500万円以上1500万円未満 | 借金総額の5分の1 |
| 1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
| 3000万円以上5000万円以下 | 借金総額の10分の1 |
この基準は全ての個人再生申立者に適用される基本的なルールです。
清算価値(財産基準)
清算価値は、申立人が保有する財産の総額を評価した金額です。
退職金の評価額、預貯金、不動産、自動車、保険の解約返戻金などが含まれます。
個人再生では最低でも清算価値以上の金額を返済しなければならないため、財産が多いほど返済額も増える仕組みです。
たとえば最低弁済額が100万円でも清算価値が250万円であれば、返済額は250万円となります。
退職金見込額が高い方は、この清算価値が返済額を左右する重要な要素になるでしょう。
可処分所得
可処分所得は、給与所得者等再生を選択した場合にのみ適用される基準です。
収入から税金や社会保険料、最低生活費を差し引いた金額の2年分が可処分所得として計算されます。
この金額が最低弁済額や清算価値よりも高い場合は、可処分所得が返済額となります。
収入が高い方は可処分所得が返済額の決定要因になることが多いため、注意が必要です。
小規模個人再生を選択すれば可処分所得は考慮されませんが、債権者の同意が必要という別の条件があります。
個人再生における退職金の例外

退職金の取り扱いには、一般的なルールとは異なる例外的なケースも存在します。
ここでは代表的な2つの例外について解説します。
確定拠出型年金は退職金として扱われない
確定拠出型年金(DC年金)は、個人再生における退職金として扱われません。
確定拠出型年金は原則として60歳まで引き出すことができず、差し押さえも禁止されているからです。
そのため清算価値の計算においても、確定拠出型年金の残高は財産として計上する必要がありません。
一方で確定給付型年金や退職一時金制度は、通常の退職金として評価されます。
自分の会社の退職金制度がどの種類に該当するか、事前に確認しておくことが大切です。
会社への借金と退職金は相殺することが可能
会社から借入がある場合、退職金と借金を相殺することが認められています。
たとえば、会社に100万円の借金があり、退職金見込額が800万円の場合、相殺後の700万円が評価対象となります。
相殺によって退職金の評価額が減少すれば、清算価値も下がり、結果として返済額が少なくなる可能性があります。
ただし個人再生では特定の債権者だけを優遇することは原則として禁止されているため、相殺のタイミングには注意が必要です。
会社への借金がある方は、弁護士に相談して適切な対応を確認することをおすすめします。
個人再生の手続きには「退職金見込額証明書」が必要

個人再生を申し立てる際には、退職金見込額証明書の提出が求められます。
この証明書の取得方法と、会社にバレずに手続きを進める方法について見ていきましょう。
個人再生することを会社にバレずに取得する方法
退職金見込額証明書を会社に請求する際、個人再生手続きのことを伝える必要はありません。
「住宅ローンの審査に必要」「金融機関から求められた」など、別の理由を説明することで取得できます。
多くの会社では退職金見込額の照会に対応しており、特に理由を詳しく聞かれることは少ないでしょう。
証明書の様式は会社によって異なりますが、現時点で退職した場合の見込額が記載されていれば問題ありません。
【注意】会社に借金がある場合はバレてしまう
会社から借入がある場合、個人再生の手続きを進めると会社に知られてしまいます。
会社も債権者として裁判所から通知を受け取るからです。
社内融資制度や従業員向けローンを利用している方は、この点を理解しておく必要があります。
会社に知られることで職場での立場が悪くなるのではと心配される方もいますが、借金を理由に解雇することは法律で禁止されています。
ただし社内での信用に影響する可能性はあるため、事前に弁護士と相談して対応を検討することが賢明でしょう。
個人再生と退職金についてよくある質問

個人再生における退職金の扱いについて、多くの方が疑問に思うポイントがあります。
手続きの中で困らないよう、よくある質問とその回答をまとめました。
「退職金はない」と言ってごまかすことはできる?
「退職金はない」と虚偽の申告をすることはできません。
個人再生の申立書には財産目録を提出する義務があり、虚偽の記載は財産隠しとみなされるからです。
財産隠しが発覚した場合、個人再生の申立てが却下されるだけでなく、詐欺再生罪として刑事罰の対象になる可能性もあります。
裁判所は会社の就業規則や退職金規定を確認することができるため、虚偽の申告はすぐに発覚するでしょう。
会社が見込額証明書を発行してくれない場合は?
稀ですが、発行してもらえない場合でも対処方法があります。
就業規則や退職金規定のコピーを提出し、自分で計算した見込額を申告することが認められるからです。
計算方法が複雑な場合は、弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめします。
見込額証明書がない場合でも手続きできる?
個人再生の手続き自体を進めることは可能です。
ただし証明書がない場合、裁判所は退職金の評価を高めに見積もる可能性があります。
推定額は実際の見込額よりも高くなることが多く、結果として返済額が増えてしまうリスクがあります。
できる限り証明書を取得するか、就業規則に基づいた計算資料を準備することが望ましいでしょう。
まとめ:個人再生において退職金は財産の一部として扱われる

個人再生では退職金そのものが没収されることはなく、将来受け取る全額を確保できます。
ただし退職金は財産として評価され、返済額の計算に影響を与える重要な要素です。
退職予定がない場合は見込額の8分の1、退職予定や退職済みの場合は4分の1、既に受け取っている場合も4分の1が清算価値として計上されます。
手続きには退職金見込額証明書が必要ですが、住宅ローン審査など別の理由を伝えることで会社にバレずに取得することが可能です。
退職金の評価額によっては返済額が大きく変わる可能性があるため、個人再生を検討している方は早めに弁護士に相談することをおすすめします。
専門家のアドバイスを受けることで、自分の状況に最適な債務整理の方法を選択し、確実に借金問題を解決できるでしょう。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

