建設業界では若者が定着しないことが「当たり前」という風潮が広がっています。
国土交通省の統計データによると、建設業就業者のうち29歳以下の若年層はわずか約12%に過ぎず、全産業平均の16%と比較しても明らかに低い水準です。
一方で55歳以上の就業者は約36%を占めており、業界全体の高齢化が急速に進んでいます。
さらに深刻なのは、高校卒業後に建設業へ就職した若者の3年以内離職率が約40%に達している点です。
若者が建設業を敬遠し、入職しても早期に辞めてしまう背景には、長時間労働や厳しい労働環境、給与面での不満など、複数の構造的な問題が横たわっています。
本記事では、建設業における若者離れの実態を統計データで確認した上で、若者離れが「当たり前」と言われる6つの理由を解説します。
また、10年後の業界の姿や、実際に建設業を辞めた人々の体験談もご紹介します。
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目次
建設業における若者離れの現状

建設業界では若者の就業者数が極端に少なく、高齢化が急速に進行しています。
まずは客観的なデータを用いて、建設業における若者離れの深刻な現状を確認していきましょう。
若年層の就業状況、高齢者の割合、そして離職率という3つの観点から、業界が直面している人材不足の実態を明らかにします。
30歳未満の若者は約1割しかいない
建設業就業者における若年層の割合は、他の産業と比較して著しく低い状況です。
国土交通省の調査データによると、建設業就業者のうち29歳以下の若者は約11.7%に留まっており、全産業平均の約16%を大きく下回っています。
かつては1997年時点で29歳以下の就業者が22.0%を占めていましたが、この四半世紀で約半数にまで減少してしまいました。
若者が建設業を選ばなくなった結果、業界全体の世代交代が停滞し、技術やノウハウの継承にも深刻な支障が生じています。
新規学卒者の建設業への入職者数も、2024年には3.8万人と11年ぶりに4万人を割り込み、若手人材の確保がますます困難になっています。
就業者は65歳以上が最多
建設業では若年層の減少とは対照的に、高齢就業者の割合が年々増加しています。
2024年のデータでは、建設業就業者のうち55歳以上が約37%を占め、65歳以上の就業者も80万人台に達しています。
一方、1997年時点では55歳以上と29歳以下の割合がほぼ同水準の24.1%と22.0%でしたが、現在は若年層11.7%に対して高齢層35.9%と、その差は約3倍にまで拡大しています。
特に注目すべきは、過去20年間で65歳以上の就業者が37万人から80万人へと倍増している点です。
このまま高齢化が進めば、10年後には現在の熟練技能者の大半が引退することになり、建設業の生産体制を維持すること自体が困難になると予測されています。
3年以内離職率が約40%
建設業では若者が入職したとしても、早期に離職してしまうケースが非常に多くなっています。
厚生労働省のデータによると、高校卒業後に建設業へ就職した人の3年以内離職率は約40%を超えており、全産業平均よりも高い水準です。
大卒者の場合でも、建設業における3年以内の離職率は約30%に上り、若手人材の定着率の低さが顕著に表れています。
若者が建設業に就職しても定着せず、すぐに辞めてしまう背景には、入職前に抱いていたイメージと実際の労働環境のギャップがあります。
長時間労働、休日の少なさ、人間関係の難しさなど、想像以上に厳しい現実に直面し、早期離職を選択する若者が後を絶ちません。
建設業の若者離れが当たり前である理由6選

建設業で若者離れが「当たり前」と言われるようになった背景には、業界特有の構造的な問題が複数存在します。
ここでは、若者が建設業を敬遠し、入職しても早期に辞めてしまう主な理由を6つ取り上げ、それぞれ詳しく解説していきます。
長時間労働が慢性化している
結論から言えば、建設業の労働時間は他産業と比較して極端に長く、これが若者離れの最大の要因となっています。
厚生労働省の調査によると、建設業の年間総実労働時間は約2,056時間で、全産業平均よりも約336時間も長くなっています。
月換算にすると、建設業の労働時間は163.5時間であるのに対し、全産業平均は136.1時間と、約30時間もの差があります。
工期厳守が絶対条件となる建設業では、天候不順などで作業が遅れると残業や休日出勤で対応せざるを得ず、一人当たりの業務負担が非常に大きくなります。
近年の若者は仕事と私生活の両立を重視する傾向が強く、長時間労働が常態化している建設業を就職先として選ばなくなっているのです。
労働環境が厳しい
建設業の労働環境は、肉体的にも精神的にも若者にとって非常に厳しいものとなっています。
建設現場では、休憩時間以外は立ちっぱなし、動きっぱなしの状態が続き、重い資材の運搬や高所での作業など、体力を酷使する業務が日常的に発生します。
特に夏季は猛暑の中での屋外作業となるため、熱中症のリスクも高く、健康面での負担が大きいことが問題視されています。
さらに、腰痛や関節痛など、長年の肉体労働による身体への負担が蓄積し、若いうちから体を痛めてしまうケースも少なくありません。
このような過酷な労働環境に耐えられず、体力の限界を感じて離職を決意する若者が多いのが実情です。
3Kのイメージが強い
建設業には長年「きつい、汚い、危険」という3Kのイメージが定着しており、これが若者の職業選択に大きな悪影響を与えています。
実際に、建設現場では高所作業や重機操作など、わずかなミスが重大な事故につながる危険性があり、安全管理が極めて重要となります。
また、泥や砂埃にまみれる作業も多く、清潔な環境で働きたいと考える若者にとっては敬遠される要因となっています。
近年では安全対策や労働環境の改善が進められているものの、一度根付いた負のイメージを払拭するには長い時間がかかっています。
昭和の慣習が根強く残っている
建設業界にはいまだに昭和時代の古い価値観や慣習が色濃く残っており、これが若者の定着を妨げる大きな要因となっています。
現場では「気合」や「根性」といった精神論が重視される傾向があり、合理的な働き方を求める現代の若者とは価値観が大きく異なります。
上下関係が厳しく、理不尽な指示や厳しい叱責が日常的に行われるケースもあり、若手社員が精神的に追い詰められることも少なくありません。
さらに、就業時間外に行われる教育研修や飲み会への参加が暗黙の了解として求められるなど、プライベートの時間まで仕事に拘束される文化が残っています。
このような時代にそぐわない慣習が、多様な働き方を求める若者にとっては大きなストレスとなり、離職の引き金になっています。
高齢者が多く価値観が合わない
建設業では高齢の就業者が大多数を占めており、若手社員との間に大きな世代間ギャップが生じています。
前述の通り、建設業就業者の約37%が55歳以上である一方、29歳以下はわずか12%という極端な年齢構成となっています。
このような環境では、若者が同世代の仲間を見つけることが難しく、職場での孤立感を感じやすくなります。
また、高齢の職人や上司との間では、仕事に対する価値観や働き方の考え方に大きな隔たりがあり、コミュニケーションがうまく取れないことも多々あります。
若者は柔軟な働き方や効率化を重視する一方、ベテラン層は従来のやり方や慣習を変えることに抵抗感を持つ傾向があり、この価値観の不一致が若者の離職につながっています。
給与・待遇が悪い
建設業の給与水準は決して低くはないものの、労働の過酷さに見合っていないと感じる若者が多いのが実情です。
厚生労働省の調査によると、建設業の平均給与は全産業平均を上回る水準にありますが、長時間労働や肉体的負担の大きさを考慮すると、割に合わないと考える人が少なくありません。
特に技能労働者の多くは日給制で働いており、雨や雪などの悪天候で現場が休みになると、その日の収入が得られないという不安定さがあります。
内閣府の調査では、若者が仕事をする目的として「収入を得るため」が84.6%と圧倒的多数を占めており、労働条件に見合った収入が得られないことは大きな不満要因となります。
また、社会保険の加入率の低さや福利厚生の不十分さなど、待遇面での問題も若者が建設業を避ける理由の一つとなっています。
建設業の10年後はどうなる?終わってる?

建設業界の10年後を予測すると、現状のままでは極めて厳しい状況に陥る可能性が高いと言わざるを得ません。
ただし、業界全体が「終わってる」わけではなく、大きな変革の時期を迎えているという見方もできます。
ここでは、今後10年間で建設業界に起こりうる変化について、人手不足の深刻化、業界再編、そして働き方改革という3つの視点から解説していきます。
団塊世代の完全リタイアによる未曾有の人手不足
最も深刻な問題は、今後10年間で団塊世代が完全にリタイアし、建設業界に前例のない人手不足が訪れることです。
建設経済研究所の推計によると、2024年時点で技能者全体は約232万人いますが、2035年には約193万人へと減少し、わずか10年で約40万人もの人材が失われる見込みです。
特に深刻なのは、高度な技術を持つ熟練技能者の大量引退です。60歳以上の技能者は全体の約26%を占めており、10年後にはその大半が現場を去ることになります。
若年層の入職者数が増えない限り、技術やノウハウの継承が断絶し、建設現場の生産性が大幅に低下する恐れがあります。
2025年問題として知られる団塊世代の後期高齢者入りに加え、その後も続く高齢化の波により、建設業界は未曾有の人材危機に直面することになるでしょう。
中小建設会社の廃業、統合が進む
人手不足の深刻化に伴い、今後10年間で中小規模の建設会社の廃業や統合が加速すると予測されています。
2023年の建設業者の倒産件数は前年比30%以上の増加となっており、すでに淘汰の動きが始まっています。
建設業では、一定規模以上の工事を請け負うために国家資格者やベテラン技能者の確保が必須ですが、人材不足によりこれらの人材を確保できない企業が増えています。
その結果、必要な建設業許可を取得または維持できず、大きな工事を請け負えない中小企業は、事業継続が困難になるケースが相次いでいます。
一方で、人材確保や事業承継を目的としたM&Aも活発化しており、企業の統合や買収により生き残りを図る動きも出てきています。今後の建設業界は、体力のある企業への集約が進むと考えられます。
週休二日制を導入する企業が増加する
厳しい状況が続く一方で、建設業界では労働環境の改善に向けた動きも着実に進んでいます。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、原則として月45時間、年360時間以内という制限が設けられました。
これにより、長時間労働が当たり前だった建設業でも、法令遵守のために労働時間の管理を徹底せざるを得なくなっています。
また、人材確保の観点から、週休二日制を導入する企業が徐々に増加しており、従来の週休1日という働き方から脱却する動きが見られます。
国や業界団体も週休二日制の推進を後押ししており、若者にとって魅力的な業界へと変革するための取り組みが本格化しています。10年後には、建設業の働き方が大きく変わっている可能性もあるのです。
建設業が行う若者離れを止めるための取り組み

建設業界全体で若者離れを食い止めるため、様々な施策が実施されています。
人材確保と定着は業界の存続に直結する重要課題であり、企業や業界団体、行政が一体となって改善に取り組んでいます。
ここでは、建設業界が実際に進めている主要な取り組みを4つ紹介し、それぞれの内容と期待される効果について詳しく解説します。
長時間労働の是正
若者離れを止めるための最重要課題として、長時間労働の是正が挙げられます。
2024年4月から建設業にも罰則付きの時間外労働の上限規制が適用され、これまで事実上無制限だった残業時間に法的な制限が設けられました。
企業側は、適正な工期の設定や施工時期の平準化を行い、無理な工程を組まないよう配慮することが求められています。
また、労働時間を正確に把握するための勤怠管理システムの導入や、業務の効率化による労働時間の削減にも取り組む企業が増えています。
長時間労働が是正されれば、若者にとって働きやすい環境が整い、建設業への就職や定着率の向上が期待できます。
デジタル技術の導入による効率化(DX)
建設業界では、人手不足を補い生産性を向上させるため、DXの推進が急速に進んでいます。
BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)といった3次元モデル技術の活用により、設計から施工、維持管理まで一貫したデジタル管理が可能になっています。
また、ドローンによる測量や現場監視、AIを活用した工事進捗管理など、最新技術の導入により作業の効率化と省人化が実現しつつあります。
クラウドサービスを利用した情報共有により、現場と事務所の連携がスムーズになり、無駄な移動時間や待機時間の削減にもつながっています。
デジタル技術に親しんで育った若者世代にとって、こうした先進的な取り組みは建設業への関心を高める要因となり、業界イメージの改善にも寄与しています。
建設業界の魅力を発信
建設業の魅力を若者に伝えるため、業界全体でイメージ改善と情報発信に力を入れています。
SNSやウェブサイトを活用して、実際に現場で活躍する若手社員のインタビューや、完成した建物・インフラの写真を積極的に公開し、やりがいのある仕事であることをアピールしています。
また、小中学生向けの建設機械試乗会や現場見学会を開催し、子どもたちに建設業の面白さを体験してもらう機会を提供する企業も増えています。
さらに、従来の「3K(きつい、汚い、危険)」に代わる新しい「3K(給与、休暇、希望)」というポジティブなイメージを打ち出し、業界全体のブランディングに取り組んでいます。
こうした地道な情報発信により、建設業に対する若者の認識が少しずつ変わりつつあります。
給与の見直し
人材確保と定着のため、建設業界では給与体系の見直しと待遇改善が進められています。
特に技能労働者の日給制から月給制への移行を推進し、天候不良などによる収入の変動リスクを軽減する動きが広がっています。
また、資格取得支援制度を充実させ、技能や資格に応じた適切な昇給体系を整備することで、長期的なキャリア形成を可能にする企業が増えています。
国土交通省も適切な賃金水準の確保を推進しており、公共工事の設計労務単価を毎年引き上げるなど、業界全体の賃金底上げを後押ししています。
給与水準の向上と安定した収入の保証により、若者が安心して建設業でキャリアを築けるようになることが期待されています。
建設業を辞めてよかったという声

建設業を離れた人の多くが、転職して良かったと感じているという調査結果があります。
ある調査では、建設業から他業種へ転職した人の約91%が「辞めて後悔していない」と回答し、そのうち約70%が「辞めてよかった」と明確に肯定しています。
ここでは、実際に建設業を辞めた人々が語る「辞めてよかった」と感じる理由を3つのカテゴリーに分けて紹介します。
長時間労働から解放された
建設業を辞めた人が最も多く挙げる理由が、長時間労働からの解放です。
建設業では早朝から現場に出向き、作業終了後も片付けや翌日の準備があり、拘束時間が非常に長くなります。
転職後は残業が大幅に減り、定時で帰宅できるようになったことで、家族との時間や趣味の時間を持てるようになったという声が多く聞かれます。
ある元施工管理者は、「以前は月に100時間以上残業していたが、転職後は月30時間程度になり、心身ともに余裕が生まれた」と語っています。
また、休日出勤がなくなり、しっかりと休息が取れるようになったことで、健康状態が改善したという報告も多数あります。
パワハラから離れることができた
建設業特有の厳しい上下関係やパワハラから解放されたことも、辞めてよかった理由として多く挙げられます。
現場では理不尽な叱責や人格否定のような言動が日常的に行われるケースがあり、精神的に追い詰められる若手社員が少なくありません。
転職後は、より対等な関係で働ける環境に移り、精神的なストレスが大幅に軽減されたという体験談が多数寄せられています。
ある元建設作業員は、「毎日怒鳴られる環境から離れ、普通に会話できる職場に転職したことで、人間らしい生活を取り戻せた」と述懐しています。
人間関係のストレスから解放されたことで、仕事に対する意欲も回復し、充実した日々を送れるようになったという声が多く聞かれます。
より自分に合った業界に転職できた
建設業を辞めたことで、自分の適性や価値観に合った業界や職種に出会えたという声も多くあります。
体力面での不安から、デスクワーク中心の職種に転職し、長く働き続けられる環境を得られたというケースが見られます。
また、建設業で培った管理能力やコミュニケーション能力を活かして、IT業界や不動産業界など全く異なる分野で活躍している人も少なくありません。
ある元施工管理者は、不動産企業の技術営業職に転職し、「建設の知識を活かしながら、より働きやすい環境で新たなキャリアを築けている」と満足感を示しています。
建設業を辞めたことがきっかけで、自分が本当にやりたいことや向いている仕事を見つけられたという前向きな体験談が数多く存在します。
まとめ:建設業に合わない人は辞める選択肢も必要

建設業における若者離れは、もはや「当たり前」と言える状況になっています。
30歳未満の就業者が約1割しかいない一方で、65歳以上の高齢者が最多を占め、3年以内離職率が約40%に達するという深刻な実態があります。
建設業は今後10年間で良い方向に変化するかもしれませんが、絶対的な人手不足によって待遇が上がっても長時間労働の是正は期待できない可能性があります。
現場の仕事は人を選びます。無理に我慢せず、自分に合った道を進むことを検討してみるほうがいい人もいるはずです。
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法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

