「有休を使い切ると非常識と思われるのでは?」
「使いすぎと上司に言われたらどうしよう」
と不安に感じる方も多いでしょう。
有休の取得は労働者の正当な権利であり、付与された日数を全て消化することは法的に何の問題もありません。
一方で、職場の文化や同僚への配慮も現実として考慮する必要があります。
結論として、「法的には問題ないが、承認するかどうかは会社次第」といえます。
有休を消化しきることを推奨している企業もいれば、特に意味のない有休は棄却するという会社もあるからです。
本記事では、有休を使い切ることの是非から、円滑に有休を消化するための具体的な方法まで、労働者として知っておくべきポイントを詳しく解説します。
目次
有休を使い切ることは非常識?

社風によって180度変わる
有休を使い切ることが非常識かどうかは、職場の社風によって大きく左右されます。
働き方改革が進んだ現代でも、企業によって有休取得に対する考え方は大きく異なります。
進歩的な企業では、有休完全消化を推奨しているところもあります。
実際に大手メーカーやコンサルティング会社では、有休取得を積極的に促進する制度が整備されています。
一方で、従来型の企業文化が根強い職場では、有休取得そのものが消極的に受け取られることがあります。
特に中小企業や製造業の一部では、「仕事に穴を開ける」「他の人に迷惑をかける」という考え方が根深く残っている場合があります。
こうした環境では、有休を使い切ることが「協調性に欠ける」と評価される可能性があります。
有休取得で知っておきたいポイント

与えられた日数は自由に使える
労働基準法では、勤続年数に応じて年次有給休暇が付与されることが定められており、この日数は労働者が自由に使用できる権利です。
入社から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には10日の有休が付与され、その後は勤続年数に応じて最大20日まで増加します。
付与された有休は、労働者がいつ、どのような理由で取得しても問題ありません。
旅行や趣味、家庭の用事、単純な休息など、使途は完全に自由です。
企業側は時季変更権を行使できますが、濫用は許されません。
重要なのは、有休は「恩恵」ではなく「権利」であることです。
会社から与えられる特別な休暇ではなく、法律で保障された労働者の当然の権利として認識することが大切です。
有休申請に理由は不要
有休を取得する際、多くの職場で「理由」を聞かれることがありますが、法的には理由を説明する義務はありません。
労働基準法では、有休取得に際して理由を明示することは求められておらず、「私用のため」という記載で十分です。
しかし、現実的には職場の円滑な運営のため、ある程度の情報共有が必要な場合もあります。
例えば、急な体調不良や家庭の事情など、業務調整が必要な場合には簡潔に状況を伝えることで、周囲の理解を得やすくなります。
ただし、詳細なプライベートな事情まで説明する必要はありません。
一部の企業では、有休申請書に詳細な理由記載を求めるところもありますが、これは労働基準法の趣旨に反する可能性があります。
あくまでも業務調整のための参考情報として位置づけられるべきです。
要件を満たしていれば有休は拒否できない
企業は、労働者が法定要件を満たして有休を申請した場合、原則として拒否することはできません。
ただし、「時季変更権」という例外的な権利が認められており、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、取得時期の変更を求めることができます。
時季変更権が認められるのは、代替要員の確保が困難で業務に著しい支障をきたす場合や、同時期に多数の従業員が有休を申請した場合などです。
しかし、この権利も濫用は許されません。
人員不足を理由に常習的に有休を拒否したり、忙しいという漠然とした理由で拒否したりすることは違法です。
また、時季変更権を行使する場合でも、代替日を提示する必要があります。
単純に「だめ」と言うだけでは適切な対応とは言えません。
労働者の希望をできる限り尊重しながら、業務との調整を図ることが求められます。
有休を使い切りやすい職種、業種

製造業
製造業は、比較的有休を使い切りやすい業種の一つとして知られています。
製造業では、年間の生産計画が事前に立てられるため、閑散期や定期メンテナンス期間を活用した有休取得が可能です。
また、工場の操業カレンダーに合わせて、長期連休を取得することも珍しくありません。
大手製造業では、夏季休暇や年末年始休暇に加えて、有休を組み合わせた長期休暇制度を導入している企業も多くあります。
さらに、製造業では労働組合の組織率が高く、労働者の権利意識も比較的高い傾向があります。
そのため、有休取得に対する理解も進んでおり、「使い切ることが当然」という文化が根付いている職場も少なくありません。
インフラ関係
電力、ガス、水道、通信などのインフラ関係の企業は、社会的責任が大きい一方で、有休を使い切りやすい環境が整備されています。
また、公的性格の強い企業が多いため、労働法令の遵守にも厳格で、有休取得権が適切に保障されています。
多くのインフラ企業では、年間休日数も多く設定されており、有休と合わせて十分な休暇を確保できる制度が整っています。
特に大手企業では、リフレッシュ休暇制度や連続休暇取得制度なども導入されており、働きやすい環境が整備されています。
公務員
公務員も有休取得率が高い働き方のひとつです。
公務員の有給休暇(年次休暇)の取得状況は、国家公務員と地方公務員で異なりますが、近年はどちらも取得促進の取り組みが進められています。
総務省の調査によれば、地方公務員の有給取得率は約70%で、民間企業の65.3%を上回っています。
事務職
事務職は、業務の性質上、比較的有休を取得しやすい職種です。
デスクワークが中心で、他の部署や外部とのやり取りはあるものの、製造現場や接客業と比べて代替が効きやすい業務が多いためです。
事務職では、月末月初や決算期など特定の時期を除けば、業務量の波が比較的緩やかです。
そのため、閑散期を狙った有休取得や、計画的な連続休暇の取得が可能です。
また、多くの事務職では複数の担当者で業務を分担しているため、一人が休んでも業務が完全に停止することは少なく、相互にカバーし合える体制が整っています。
有休を使い切るメリット

休日が増えリフレッシュできる
有休を使い切る最大のメリットは、年間の休日数が大幅に増加し、十分なリフレッシュ時間を確保できることです。
法定年間休日は最低105日ですが、有休20日を完全消化することで、実質的には125日の休日を確保できます。
これらの追加休日を活用することで、長期旅行や趣味への時間、家族との時間など、普段できない活動に取り組むことができます。
特に連続した休暇を取得することで、日常から完全に離れたリフレッシュが可能になり、ストレス解消効果も高まります。
疲労回復により生産性が上がる
適切な休息を取ることで疲労が回復し、結果として仕事の生産性向上につながることは、数多くの研究で実証されています。
有休を使い切ることで、慢性的な疲労を蓄積させることなく、常に良好なコンディションで業務に臨むことができます。
疲労が蓄積した状態では、集中力の低下、判断力の鈍化、ミスの増加などが起こりやすくなります。
一方で、適切に休息を取った後は、思考がクリアになり、創造性も向上します。また、新しいアイデアや解決策が浮かびやすくなるため、業務効率も大幅に改善されます。
有休を使い切るデメリット

仕事の評価が下がる
残念ながら、現実的には有休を使い切ることで仕事の評価が下がる可能性があります。
特に古い体質の企業や、労働集約的な業種では、「休まずに働く人」が高く評価される文化が根強く残っているからです。
このような環境では、有休を使い切る人に対して「やる気がない」「責任感が薄い」」といった否定的な印象を持たれる場合があります。
昇進や昇格の際に、有休取得率が非公式の評価要素として考慮されることもあり、キャリア形成に影響を与える可能性があります。
ただし、このような評価は法的には問題があり、有休取得を理由とした人事評価の不利益取り扱いは労働基準法違反になる可能性があります。
しかし、現実的には証明が困難な場合が多く、泣き寝入りするケースも少なくありません。
上司や同僚から「非常識」と見られる
有休を使い切ることで、上司や同僚から「非常識」とのレッテルを貼られるリスクがあります。
特に、有休取得率が低い職場では、積極的に休暇を取得する人が目立ってしまい、批判の対象となりやすくなります。
「みんなが忙しく働いているのに、一人だけ休んでいる」「チームの負担を考えていない」といった批判を受けることがあります。また、有休取得のタイミングによっては、「空気を読めない人」として認識される場合もあります。
同僚からの視線も無視できない要素です。
有休を取りたくても取れない同僚がいる中で、自分だけが頻繁に休暇を取得していると、妬みや不満の対象となる可能性があります。
職場の人間関係が悪化し、日常的な業務にも支障をきたす場合があります。
有休を使いすぎる、使いまくる人はどうなる?

人事評価を下げられる
有休を多用する人に対して、人事評価を不当に下げる企業は残念ながら存在します。
これは明確に法律違反ですが、評価の理由を「勤務態度」「積極性の欠如」といった表現で記載されることが多く、有休取得が直接の原因であることを証明するのは困難です。
人事評価が下がると、昇進昇格の機会を逸したり、賞与や昇給に影響が出たりする可能性があります。
また、人事異動の際に不利な部署への配置転換を命じられることもあります。
これらの措置は、表面上は有休取得とは無関係な業務上の判断として処理されるため、対抗するのが困難な場合が多いです。
しかし、近年は労働関係の法令遵守が厳格化されており、有休取得を理由とした不利益取り扱いに対する監督も強化されています。
証拠を適切に保全し、労働基準監督署や労働局に相談することで、是正を求めることも可能です。
上司からイヤミを言われる
有休を頻繁に取得する人に対して、上司から直接的または間接的にイヤミを言われるケースは珍しくありません。
「また休むの?」「みんな忙しいのに」といった発言から、会議の場で皮肉を込めて「○○さんは休暇を満喫されてますね」といった公然とした批判まで、様々な形で嫌がらせが行われます。
このような発言は、職場のハラスメントに該当する可能性があります。
結果として、職場全体の有休取得率が低下し、従業員の福利厚生環境が悪化する悪循環が生まれます。
有休を拒否される(本来は違法)
有休を多用する人に対して、企業側が申請を拒否するケースがあります。
これは明確に労働基準法違反ですが、「業務上の都合」「繁忙期」といった理由をつけて、事実上の拒否が行われることがあります。
時季変更権は企業に認められた権利ですが、その行使には厳格な要件があります。
事業の正常な運営を妨げる場合に限定されており、単なる人手不足や業務の忙しさだけでは正当な理由になりません。
また、代替日を提示することなく単純に拒否することは、時季変更権の濫用にあたります。
悪質な企業では、有休申請書を受け取らない、申請書の不備を理由に受理を遅らせるなど、様々な方法で有休取得を阻害する場合があります。
有休が取れないときの対処法、使い切るコツ

計画的に有給を申請する
有休を確実に取得し、使い切るためには、年間を通じた計画的なアプローチが不可欠です。
年度初めに有休取得予定を立て、業務カレンダーと照らし合わせながら最適な時期を選定することが重要です。
まず、会社の繁忙期と閑散期を把握し、業務に支障の少ない時期を特定します。
決算期、年末年始、新年度開始時期などは避け、比較的業務量が安定している時期を狙うことで、周囲の理解を得やすくなります。
また、同僚の有休取得予定も事前に確認し、重複を避けることで業務への影響を最小限に抑えることができます。
毎月1~2日ずつ有給を取る
有休を使い切るための効果的な方法の一つは、毎月定期的に1~2日ずつ取得することです。
この方法により、年間20日の有休を無理なく消化できます。
月1回の有休取得は、業務に与える影響も最小限に抑えることができます。
連続した長期休暇と違い、1日だけの休暇であれば業務の引き継ぎも簡単で、代替要員の確保も容易です。
月初めや月末など、定例業務が少ない時期を選んで取得することで、さらに業務への影響を軽減できます。
業務に支障が出ないように取得する
有休取得時に最も重要なのは、業務への影響を最小限に抑えることです。
上司や同僚からの理解を得やすくなり、有休取得に対する職場の雰囲気も改善されます。
まず、重要な会議や顧客との約束などに影響しない時期を選定することが基本です。
また、自分が担当している業務の進捗状況を把握し、区切りの良いタイミングで休暇を取得することで、業務の連続性を保つことができます。
有休取得前には、必要な業務の前倒し処理や、同僚への引き継ぎ資料の準備を行います。
緊急時の対応方法や連絡先を明確にし、不在中に問題が発生した場合の対処法も事前に整理しておくことが重要です。
このような準備を怠らないことで、安心して休暇を取得できると同時に、職場での信頼も維持できます。
同僚の仕事を積極的に助ける
有休を円滑に取得し、職場での理解を得るためには、日頃から同僚の業務をサポートする姿勢が重要です。
互いに助け合う関係を築くことで、自分が休暇を取得する際にも協力を得やすくなります。
同僚が有休を取得する際には、積極的に業務をカバーし、快く送り出すことで、自分が休暇を取る際にも同様の協力を期待できます。
また、繁忙期や緊急時には、進んで残業や休日出勤を引き受けることで、普段の有休取得に対する理解を得ることができます。
このような協力的な姿勢は、職場の雰囲気改善にもつながります。
有休取得を「迷惑をかける行為」ではなく「お互い様の権利行使」として認識される環境を作ることができれば、全員が気持ちよく有休を取得できるようになります。
有休を使い切ることのよくある質問

有休を使い切るとクビになる?
「勤務態度不良」「業務遂行能力の不足」といった別の理由をつけて解雇される可能性はゼロではありません。
有休を使い切ることを理由に解雇されることは、法的にあり得ません。
しかし、「有休=ズル休み」という価値観を持った会社であれば、退職に追い込んでくることも十分に予想できます。
「有休使いすぎ」と言われたらどうする?
感情的に反論するのはやめておくことをオススメします。
まずは、業務に支障をきたしていない点を説明しましょう。
相手の印象を覆すことは難しいため、喧嘩をせずにやり過ごすことがベストです。
有休取得を拒否されたらどうする?
感情的に反論せず、別の理由を考えましょう。
例えば、家族の介護、体調不良などです。
それでも拒否される場合は、労働基準監督署への申告も選択肢となります。
有休取得拒否は労働基準法違反であり、監督署から企業に対して是正指導が行われる可能性があります。
まとめ:有休を使い切ると人事評価が下がるかも

有休を使い切ることは法的に全く問題のない労働者の正当な権利行使です。
しかし、現実的には職場の文化や上司の考え方によって、人事評価に悪影響が出る可能性があることも事実です。
理想的には、有休完全消化が当たり前の職場環境が整備されるべきですが、現状では企業によって対応に大きな差があります。
そのため、有休を取得する際には、業務への配慮と周囲との協調を心がけながら、計画的に進めることが重要です。
有休を拒否される会社から逃げたい…という場合は
有休取得を理由に不当な扱いを受けたり、正当な権利を認めてもらえなかったりする会社からは、転職を検討することも一つの選択肢です。
会社が変わると、有休取得への考え方も180度変わるからです。
転職活動を行う際は、応募先企業の有休取得率や働き方に関する方針を事前に調査することが重要です。
企業のホームページや求人情報、口コミサイトなどを通じて、実際の労働環境を確認しましょう。
面接の際にも、働き方や休暇制度について質問することで、企業の姿勢を把握することができます。
もしあなたが、会社を辞めることを伝えにくい…!という場合は、当弁護士事務所へ無料相談してみてください。
退職代行だけでなく、未払い残業代やパワハラの慰謝料を回収できる可能性もあります。
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法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

