「敷金が返還されずに困っている…」
「アルバイト代を支払ってもらえない…」
少額の金銭トラブルに巻き込まれたとき、「裁判なんて大げさでは?」「弁護士費用が高くつきそう…」と諦める方は多いです。
しかし、泣き寝入りする必要はありません。
60万円以下の金銭トラブルなら「少額訴訟」という手続きがあるからです。
費用も自分で行えば1万円〜1.5万円程度で済み、1回の審理で即日判決が出ます。
本記事では、少額訴訟の費用相場、やり方、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
- 少額訴訟は60万円以下の金銭請求で利用できる
- 自分で行えば1万円〜1.5万円程度で済む
- 1回の審理で即日判決が出る
目次
少額訴訟とは?

60万円以下の金銭請求を裁判1回で解決する手続き
少額訴訟は、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用できる訴訟手続きです。
通常の裁判と比べて手続きが簡易化されていることが特徴です。原則として1回の審理で即日判決が出ます。
審理時間は通常30分から2時間程度で完了するため、時間的な負担が少なく済みます。
国が正式に認めた合法的な制度であり、一般の方が簡単かつ迅速に訴訟を起こせるように設けられた制度です。
通常訴訟との違い
少額訴訟と通常訴訟には、手続きの簡易性と期間に差において大きな違いがあります。
通常訴訟は何度も期日が設定され、審理が数か月から1年以上かかることもあります。
ところが、少額訴訟は原則1回の審理で終了し、当日中に判決が言い渡されます。
費用面でも、少額訴訟は訴額が60万円以内に限られるため、印紙代も最大6,000円で済みます。
判決に不服がある場合、通常訴訟では控訴が可能ですが、少額訴訟では控訴できず異議申し立てになります。
少額訴訟の費用相場は?

自分で行う場合は1〜1.5万円程度
少額訴訟を自分で行う場合、費用は1万円から1.5万円程度で済みます。
裁判所に納める費用のみで手続きが可能です。主な費用の内訳は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 収入印紙代 | 1,000円〜6,000円 | 請求額10万円なら1,000円、60万円なら6,000円 |
| 予納郵券 | 約6,000円 | 裁判所が書類を送付するための切手代 |
| 交通費 | 数百円〜数千円 | 裁判所への往復交通費 |
| コピー代 | 数百円程度 | 証拠書類の複写費用 |
訴え提起手数料は請求額によって変動します。
予納郵券は使わなかった分が後日返還されるため、実質的な負担はさらに少なくなります。
勝訴すれば裁判費用を相手に請求できるため、実質0円で手続きを進められる可能性もあります。
弁護士に依頼する場合は10〜20万円程度
弁護士に少額訴訟を依頼する場合、費用は10万円から20万円程度が相場です。
弁護士報酬は事件の内容に関係なく一定の労力がかかるからです。
一般的な弁護士費用の内訳は以下の通りです。
| 費用項目 | 金額 | 説明 |
|---|---|---|
| 法律相談料 | 5,000円程度 | 初回相談。無料の事務所もある |
| 着手金 | 10万円〜30万円 | 依頼時に支払う基本料金 |
| 成功報酬 | 回収額の10〜20% | 勝訴して金銭を回収できた場合 |
| 日当 | 3万円〜5万円 | 弁護士が裁判所に出廷した場合 |
しかし、少額訴訟の場合は請求額が60万円以内と限られているため、費用倒れになる可能性があります。
費用倒れにならないよう、無料相談を活用して事前に弁護士に相談して、依頼するかどうか判断することをおすすめします。
少額訴訟のやり方

訴状を書く
少額訴訟を始めるには、まず訴状を作成します。
訴状には請求の趣旨、請求の原因、証拠などを記載する必要があります。
裁判所のウェブサイトには訴状の書式と記載例が用意されていますので、記載例に従って記入していけば、法律知識がなくても作成できます。
請求の原因には、お金を貸した経緯や返済の約束、返済されていない事実などを時系列で記載します。
訴状を提出・受理
訴状が完成したら、管轄の簡易裁判所に提出します。
原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が管轄となるからです。
訴状と一緒に収入印紙と予納郵券も提出します。
裁判所の窓口で訴状の内容を確認してもらい、不備がなければ受理されます。
期日の連絡がある
訴状が受理されると、裁判所から期日の連絡が来ます。
通常、申立てから1か月から2か月後に期日が設定されます。
期日には必ず出廷する必要があるため、スケジュールを調整しておきましょう。
事前聴取
期日の前に、裁判所から事前聴取のための連絡が来る場合があります。
裁判官が事件の内容を把握し、審理を効率的に進めるためです。
電話や書面で事案の概要や証拠の有無などを確認されます。
答弁書を受け取る
期日の前に、被告から答弁書が提出されます。
答弁書には被告の言い分や反論が記載されています。
答弁書の内容を確認し、反論に対する準備をしておくことが重要です。
法廷で審理
期日当日は法廷で審理が行われます。
原告と被告が双方の主張を述べ、証拠を提出します。審理は30分から2時間程度で終わります。
裁判官は双方の主張を聞き、証拠を確認した上で質問を行います。
当日中に判決
審理が終わると、その日のうちに判決が言い渡されます。
少額訴訟は1回の審理で結論を出す制度なので、長引くことはありません。
判決では「被告は原告に対し金○○万円を支払え」という主文が示されます。
判決を待たず和解で解決することも可能

少額訴訟では、判決を待たずに和解で解決することも可能です。
裁判官が和解を勧めることも多いです。
和解とは、原告と被告が話し合って互いに譲歩し、合意に達することで、成立すれば和解調書が作成され、判決と同じ効力を持ちます。
相手が支払いに応じない場合は、和解調書に基づいて強制執行が可能になります。
少額訴訟のメリットは?泣き寝入りがいらない理由

手続きが簡単
少額訴訟の最大のメリットは、手続きが簡単な点です。
弁護士に依頼しなくても個人で手続きを進められるほどです。
訴状の書式は裁判所で入手でき、記載例を見ながら記入していけば作成できます。
法律の専門知識がなくても、必要事項を順番に記入するだけで訴状が完成します。
裁判所の窓口では職員が書き方を教えてくれるため、不安な点があればその場で質問できます。
訴訟費用が安い
訴訟費用が安く済む点も大きなメリットです。
自分で手続きを行えば1万円から1.5万円程度で済むからです。
通常訴訟の場合、弁護士費用だけで数十万円かかることもあります。
少額訴訟なら弁護士に依頼しなくても手続きできるため、大幅に費用を抑えられます。
勝訴すれば訴訟費用を相手に請求できるため、実質的な負担はさらに軽減されます。
1回の審理で判決が出る
1回の審理で判決が出る点も重要なメリットです。
通常訴訟のように何度も裁判所に通う必要がありません。
通常訴訟では数か月から1年以上の期間がかかり、何度も期日が設定されます。
少額訴訟なら1日で決着がつくため、金銭トラブルを早期に解決でき、精神的なストレスからも早く解放されます。
少額訴訟に必要な書類

訴状
訴状は少額訴訟を起こすための最も重要な書類です。
訴状には請求の趣旨、請求の原因、証拠の表示などが記載されます。
裁判所の窓口やウェブサイトから書式をダウンロードし、記載例を参考にしながら作成します。
手数料(収入印紙)
訴状を提出する際には、訴え提起手数料として収入印紙を貼付します。
手数料の額は請求額に応じて決まっています。
収入印紙は郵便局や裁判所内の売店で購入できます。
印鑑
訴状や各種書類に押印するため、印鑑を持参します。
認印で構いませんが、シャチハタ印は使用できません。
証拠の写し
主張を裏付ける証拠書類のコピーを提出します。
そもそも証拠がなければ請求は認められません。借用書、契約書、メールのやり取り、振込明細、領収書などが証拠になります。
少額訴訟のデメリット

被告の希望で通常訴訟になる可能性がある
少額訴訟の大きなデメリットは、被告の希望で通常訴訟に移行する可能性がある点です。
被告が通常訴訟への移行を申し立てた場合、原告は拒否できないからです。
通常訴訟に移行すると、複雑な書類の作成や何度も裁判所への出頭が必要になります。
審理も数か月から1年以上かかることがあり、時間的・精神的な負担が大幅に増えます。
本人だけでの対応が難しくなるため、弁護士に依頼せざるを得なくなります。
判決に不服があっても控訴できない
少額訴訟では判決に不服があっても控訴できません。
控訴とは上級裁判所に判決の見直しを求める手続きですが、少額訴訟には認められていません。
勝訴しても敗訴しても、判決はその時点で確定します。
ただし、判決に不服がある場合は「異議申し立て」という手続きが可能です。異議申し立てをすると、同じ簡易裁判所で通常訴訟として審理がやり直されます。
相手の住所がわからないと訴訟を起こせない
相手の住所が不明な場合、少額訴訟を起こせません。
少額訴訟の条件として、相手の住所の突き止めは必須となります。
通常訴訟なら公示送達という方法で、住所不明でも訴状を送達できます。
少額訴訟にはそのような制度がないため、相手の正確な住所を把握している必要があります。
住民票や戸籍附票を取得して相手の住所を調査することは可能ですが、親族でなければ取得できない場合もあります。
少額訴訟に向いているケース

商品の未払い代金回収
商品を販売したのに代金を支払ってもらえないケースは、少額訴訟に向いています。
契約書や納品書、請求書などの証拠が揃っており、金額も明確だからです。
個人事業主やフリーランスの方が取引先から代金を支払ってもらえない場合、少額訴訟で迅速に回収できます。
敷金返還請求
賃貸物件の退去時に敷金が返還されないケースも、少額訴訟の典型例です。
賃貸借契約書や入居時の写真、退去時の立会記録などが証拠になるからです。
不当に敷金を返還しない場合、少額訴訟で返還を求めることができます。
知人同士の借金回収
友人や知人にお金を貸したのに返してもらえないケースでも、少額訴訟が有効です。
親しい間柄だと返済を強く迫りにくく、うやむやにされてしまいますが、少額訴訟であれば逃げられません。
借用書があれば強力な証拠になりますが、なくてもメールやLINEのやり取りで貸し借りの事実を証明できれば請求可能です。
未払い賃金請求
アルバイト先やパート先から給料を支払ってもらえないケースも、少額訴訟で解決できます。
雇用契約書やタイムカード、給与明細などが証拠になるからです。
残業代の未払いや、突然の解雇で給料を支払ってもらえない場合にも利用できます。
少額訴訟で勝つポイント

証拠を十二分に用意する
少額訴訟で勝つための最も重要なポイントは、証拠を十分に用意することです。
裁判は証拠に基づいて判断されるからです。口頭での主張だけでは、裁判官は事実を認定できません。
契約書、借用書、メールやLINEのやり取り、銀行振込の明細、領収書、写真など、主張を裏付ける証拠を集めます。
少額訴訟は1回の審理で終わるため、当日までにすべての証拠を準備して提出しなければなりません。
時系列の一覧表を作成する
時系列の一覧表を作成すると、裁判官に事実関係を理解してもらいやすくなります。
複雑な経緯を短時間で説明する必要があるからです。
いつお金を貸したのか、返済期限はいつだったのか、催促した日時、相手の返答など、出来事を時系列順に整理します。
表にまとめることで、一目で全体の流れがわかります。
事前に債務者の財産を調査しておく
勝訴しても相手が支払わない場合に備えて、事前に相手の財産を調査しておくことが重要です。
判決を得ても財産がなければ回収できないからです。
相手の勤務先、預貯金口座、不動産の有無などを把握しておきます。
勤務先がわかっていれば給与の差し押さえが可能ですし、銀行口座がわかっていれば預貯金を差し押さえられます。
少額訴訟はどこでできる?

原則:相手方の住所地の簡易裁判所
少額訴訟は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所で行います。
民事訴訟法で被告の住所地を管轄する裁判所が原則的な管轄とされているからです。
たとえば、相手が東京都渋谷区に住んでいる場合、東京簡易裁判所の渋谷出張所が管轄になります。
相手の住所地の裁判所に訴状を提出する必要があるため、遠方の場合は交通費や時間的な負担が大きくなります。
例外:原告の住所地における簡裁でも可
一定の場合には、原告の住所地の簡易裁判所でも少額訴訟ができます。
義務履行地が原告の住所地である場合や、不法行為地が原告の住所地である場合などです。
借金の返済場所として原告の住所地が指定されている場合、原告の住所地の簡易裁判所に訴えを起こせます。
双方が合意すれば、どこの簡易裁判所でも手続きが可能です。
管轄に迷ったら弁護士に相談してみる
管轄裁判所の判断に迷った場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
誤った裁判所に訴状を提出すると、手続きがやり直しになるからです。時間と費用の無駄になってしまいます。
弁護士なら事案の内容を聞いて、適切な管轄裁判所を教えてくれます。
少額訴訟は弁護士に依頼するメリット

費用倒れにならないよう無料相談も可能
弁護士に依頼する場合、費用倒れにならないよう無料相談を活用できます。
無料相談で事案の内容を説明し、少額訴訟で解決できるか、費用倒れにならないかを相談できます。
弁護士は回収の見込みや必要な費用を説明してくれるため、依頼するかどうかを判断する材料になります。
法テラスを利用すれば、弁護士費用の立て替え制度や費用の減額も可能です。
相手が弁護士を立ててきた時の備えになる
相手が弁護士を立ててきた場合に備えて、弁護士に依頼するメリットがあります。
相手に弁護士がついていると、本人だけでは対応が難しくなるからです。
少額訴訟でも相手が弁護士を立てることは可能であり、法的な主張や反論をされる可能性があります。
弁護士がいれば、相手の主張に対して適切に反論でき、有利な判決を得やすくなります。
相手が通常訴訟への移行を申し立てた場合、弁護士がいればスムーズに対応できます。
少額訴訟についてよくある質問

相手が支払わない場合は?
判決で勝訴しても相手が支払わない場合、強制執行の手続きを行います。
判決は法的な強制力を持つため、相手の財産を差し押さえることができるからです。
少額訴訟の場合、少額訴訟債権執行という簡易な手続きを利用できます。
差し押さえの対象は預貯金や給料などの金銭債権です。
強制執行を申し立てるには、相手の財産の所在を特定する必要があります。
訴訟費用は相手に請求できる?
勝訴した場合、訴訟費用を相手に請求できます。
裁判所が判決の中で「訴訟費用は被告の負担とする」と判断するからです。
訴訟費用には、収入印紙代、予納郵券代、証拠書類のコピー代などが含まれます。
訴状の「請求の趣旨」に「訴訟費用は被告の負担とする」と記載しておくことで、訴訟費用の請求が認められやすくなります。
ただし、弁護士費用は原則として訴訟費用には含まれないため、相手に請求することはできません。
まとめ:少額訴訟の費用は弁護士を立てなければ1.5万円以内

少額訴訟の費用は、弁護士を立てなければ1.5万円以内で済みます。
訴え提起手数料は最大でも6,000円、予納郵券は約6,000円、交通費などを含めても1万円から1.5万円程度です。
弁護士に依頼すると10万円から20万円程度の費用がかかりますが、自分で手続きすれば大幅に費用を抑えられます。
手続きも簡単で、裁判所の書式を使えば法律知識がなくても訴状を作成できます。
証拠を十分に用意し、時系列の一覧表を作成することで、勝訴の可能性が高まります。
負けたら費用は自分持ちです!
少額訴訟で敗訴した場合、訴訟費用は自分で負担することになります。
判決で「訴訟費用は原告の負担」と判断されるからです。
勝訴する見込みがない場合は訴訟を起こすべきではありません。
証拠が不十分だったり、法的な根拠が薄かったりする場合、敗訴のリスクがあります。
敗訴すれば、収入印紙代や予納郵券代などの費用が無駄になります。
訴訟を起こす前に、証拠が十分に揃っているか、法的に請求が認められるかをよく確認することが重要です。
判断に迷ったら、弁護士の無料相談を利用して、勝訴の見込みを聞いてみましょう。
十分な準備をして、勝算のある事案で訴訟を起こすことが泣き寝入りしないための鍵です。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。


