引っ越しや経済的な理由で菩提寺から離れる際に必要となるのが離檀料です。
お墓の維持管理が難しくなり、檀家をやめたいと考えている方は少なくありません。
しかし、近年は檀家離れが進むと同時に、離檀料を巡るトラブルも増加しているのが実情です。
高額な離檀料を請求され、改葬に必要な書類の発行を拒否されるといった事例も報告されています。
本記事では離檀料の基礎知識から相場、浄土真宗と曹洞宗の違い、表書きの書き方まで詳しく解説します。
離檀を検討されている方は、トラブルを避けて円満に手続きを進めるために、ぜひ参考にしてください。
目次
離檀料とは?

檀家をやめる際に納める感謝のお布施
離檀料とは、檀家をやめる際に菩提寺へ納めるお布施のことを指します。
お寺にあるお墓を撤去・処分して檀家をやめることを離檀と呼び、その際に納めるお金が離檀料です。
法律的な支払い義務はないものの、長年お世話になったお寺への感謝の気持ちを表すために納めるものです。
離檀料は本来「料金」ではなく、あくまでお布施と同じ性格のものです。
檀家制度には正式な契約書が存在しないケースがほとんどであり、先祖代々受け継がれてきた慣習に基づいています。
近年、離檀料を巡るトラブルが増えている
国民生活センターによると、離檀料を含めた檀家とお寺のトラブルは毎年1,000件前後発生しています。
中には、改葬に必要な埋葬証明書の発行を「離檀料を支払うまで出さない」と拒否されるケースもあります。
離檀を希望する檀家側と、檀家離れによる経済状況の悪化を懸念するお寺側の思惑が対立するのです。
一部のお寺では離檀させないために高額な離檀料を請求することがあり、トラブルの原因となっています。
離檀料の支払いには法的義務はありませんので、双方が納得する落としどころを見つけなければなりません。
※出典:国民生活センター『相談事例>墓・葬儀サービス』2025年
よくある離檀の理由

離檀を決断する理由はさまざまですが、多くの場合やむを得ない事情によるものです。
引っ越し、檀家の高齢化、経済的な事情という3つが主な理由として挙げられます。
それぞれの事情を理解することで、お寺側への説明もスムーズに進めることができるでしょう。
引っ越し
遠方への転居によって、お墓参りに行くことが難しくなったという理由が最も多く見られます。
仕事の都合で地方から都市部へ移住したり、家族の介護で実家を離れたりするケースがあるためです。
お墓が遠くなると定期的な管理やお参りができなくなり、無縁墓となるリスクが高まります。
管理しやすい場所にお墓を移す改葬を選択する家庭が増えているのが現状です。
檀家の高齢化
檀家の高齢化により、お墓の維持管理が身体的に困難になるケースが増加しています。
墓地が山間部や坂道の多い場所にある場合、高齢者にとってお墓参りが大きな負担となるためです。
草むしりや墓石の清掃といった定期的な管理作業も、体力的に難しくなります。
子どもや孫の世代が遠方に住んでいる場合、お墓の継承自体が困難な状況に陥ります。
無縁墓化を防ぐために、元気なうちに墓じまいを決断する高齢者も少なくありません
経済的な事情
年間管理費やお布施、寄進など、檀家として支払う費用が負担となるケースもあります。
お寺との付き合いが長くなるほど、法要のたびにお布施を納める機会が増えるからです。
特に檀家の高齢化が進むと、年金生活の中で檀家としての費用を捻出することが困難になります。
核家族化が進み、複数の兄弟で費用を分担することも難しくなっているのが実情です。
お墓を守る後継者がいない場合、無縁墓化を防ぐために墓じまいを選択する家庭も増えています。
離檀の際に必要な「離檀料」とは?相場と目安

離檀料の金額は一律ではなく、お寺との関係性や地域によって大きく異なります。
一般的な相場を知っておくことで、適切な金額を判断する目安となるでしょう。
離檀料のみ
離檀料のみを納める場合、相場は5万円から20万円程度とされています。
法要1回から3回分のお布施に相当する金額が目安だからです。
お寺との付き合いの長さや寺院の格、地域性によって金額には幅があります。
先祖代々お世話になってきた菩提寺であれば、それに見合った金額を包むのが一般的です。
お寺の方針によっては離檀料を受け取らない寺院もあり、事前に確認することをおすすめします。
永代供養と併せる場合
墓じまいに伴う閉眼供養と離檀料を合わせると、総額で20万円ほどになることもあります。
閉眼供養のお布施は3万円から5万円程度が相場とされているためです。
永代供養を依頼する場合、その費用も加わるため総額は大きくなります。
永代供養の費用は合祀墓で5万円から30万円、個別墓では100万円から300万円程度です。
離檀料以外の費用も含めて総合的に予算を立てることが重要になります。
離檀手続きの流れ

離檀を円満に進めるためには、適切な手順を踏むことが不可欠です。
家族間の合意から菩提寺への相談、行政手続きまで、段階的に進める必要があります。
家族・親族と相談する
離檀を決断する前に、まず家族や親族と十分に話し合うことが最優先です。
お墓は家単位で管理されており、勝手に決めると親族間にしこりが残る可能性があるためです。
先祖のお墓を移動させることに抵抗を感じる親族もいるかもしれません。
墓地の所有権が誰にあるのかを確認し、関係者全員が納得できるまで時間をかけて話し合います。
離檀の理由を丁寧に説明し、理解を得ることでトラブルを未然に防ぐことができます。
菩提寺へ相談する
親族間で合意が得られたら、次に菩提寺の住職へ相談します。
一方的に「檀家をやめます」と伝えるのではなく、あくまで相談という形で切り出すことが重要です。
お寺にとって檀家は特別な存在であり、長年の関係を一方的に断たれることに抵抗を感じます。
やむを得ない事情があることを丁寧に説明し、感謝の気持ちを伝えながら進めることが大切です。
改葬許可の申請・墓じまいの手配をする
お寺との話し合いが進んだら、墓じまいの具体的な手配に入ります。
墓石の撤去を依頼する石材店を決定し、見積もりを取得します。墓石の撤去費用は1平方メートルあたり10万円から20万円程度が相場です。
お寺の墓地には専属の石材店がいるケースが多いため、まずはお寺に確認しましょう。
複数の石材店に見積もりを依頼して比較検討することも可能です。
閉眼供養
墓石を撤去する前に、閉眼供養を行う必要があります。
閉眼供養とは、お墓から先祖の魂を抜いて「お参りの対象」から「ただの石」に戻す儀式です。
お魂抜き、性根抜きとも呼ばれ、地域によって呼び方が異なります。
閉眼供養のお布施は3万円から5万円程度が相場とされています。
離檀料を兼ねて、少し多めの金額を「御布施」として包むこともあります。
宗派別:離檀の違い

浄土真宗の場合
浄土真宗では、お墓には魂が宿っていないという考え方から、閉眼供養は行いません。
代わりに「遷仏法要」または「遷座法要」という儀式を行います。
読経で読むお経が違うだけで、手順やお布施の金額は閉眼供養と変わりません。
浄土真宗は「他力本願」という教えに基づき、阿弥陀如来の救いによって全ての人が成仏できるとされているためです。
故人は死後すぐに極楽浄土へ旅立ち、そこで生まれ変わると考えられています。
浄土真宗では離檀料が必要ない場合があるとされていますが、これは寺院の方針によります。
曹洞宗の場合
曹洞宗の公式ホームページによると、曹洞宗では「墓じまい」という用語は正式には用いません。
離檀料に関する宗派としての規定はなく、あくまで慣習やお礼の気持ちを表すものとされているためです。
曹洞宗の離檀料の相場は10万円から20万円程度です。
離檀料は寺院と檀信徒との関係性に基づき、当事者間の話し合いによって決められます。
また、墓じまいにかかる費用の総額は、30万円から300万円程度と幅があります。
離檀料の表書きの書き方

離檀料を包む際の表書きには、いくつかの重要なマナーがあります。
表書きは「お布施」または「御布施」と記載するのが一般的です。
離檀料という表記は使わず、あくまでお布施として納めることが望ましいとされているためです。
ただし、お寺側から「離檀料」と指定があった場合は、その表記を用いても構いません。
封筒は郵便番号の枠がない白無地の封筒か、奉書紙を使用します。
奉書紙は昔から伝わる包み方であり、より丁寧な印象を与えることができます。
水引は不要で、表書きの下段中央には差出人のフルネームまたは「○○家」と記載します。
裏面の左側には差出人の名前と住所を書き、右側には包んだ金額を記載します。
離檀を希望するときの心得

前もって親族間で合意しておく
離檀は一度決めるとやり直しが難しいため、事前の準備が極めて重要です。
親族全員が納得できるまで十分に時間をかけて話し合うことが必要だからです。
特にお墓に対して深い思い入れを持つ親族がいる場合、心理的な反発が生じることもあります。
離檀の理由を明確に説明し、やむを得ない事情があることを理解してもらいましょう。
後継者がいないことや経済的な負担など、具体的な状況を共有することが大切です。
お寺への説明は丁寧に
菩提寺への説明は、感謝の気持ちを前面に出しながら丁寧に行うことが重要です。
お寺にとって檀家は先祖代々のお墓を守り、供養を行ってきた特別な存在だからです。
賃貸物件の契約を解除するような感覚で一方的に切り出すと、住職を怒らせてしまう可能性があります。
「来月で檀家をやめます」といった伝え方は絶対に避けるべきです。
「やむを得ない事情で、大変申し訳ないのですが」という姿勢で相談することが円満解決への第一歩となります。
トラブルが起きたときに備えておく
円満に離檀できることが理想ですが、万が一トラブルになった場合の対処法を知っておくことも大切です。
高額な離檀料を請求された場合、まずは二者間で話し合いの機会を設けます。
感情的にならず、離檀料の内訳を確認して適正な金額かどうかを判断します。
二者間で解決しない場合は、檀家総代や宗派の本山に相談するという方法があります。
檀家総代は檀家をまとめる代表者であり、お寺との関係性が深いため力になってもらえる可能性があります。
どうしても解決できない場合は、弁護士の利用も選択肢に入るでしょう。
高額な離檀料を請求されたら?

まずは離檀料の内訳を確認する
高額な離檀料を要求された場合、その場では応じず、別日に話し合いの機会を設けましょう。
離檀料の内訳を詳しく確認し、どのような項目が含まれているのかを把握することが重要だからです。
離檀料には閉眼供養のお布施や各種手続きの手数料が含まれていることがあります。
それぞれの項目が相場の範囲内かどうかを確認し、不明な点は質問します。
離檀料以外にかかる費用も事前に把握しておくと、予算との比較がしやすくなります。
お寺へ減額交渉する
内訳を確認した上で金額が高すぎると判断した場合、減額交渉を行います。
離檀料に法的な支払い義務がないことを理解した上で、支払える範囲の金額を提示します。
感謝の気持ちを持ちつつも、家計の状況を正直に説明することが大切です。
お寺側も裁判まで発展させたくないと考えるため、話し合いの段階で決着するケースがほとんどです。
減額交渉がうまくいかない場合は、次のステップとして専門家への相談を検討します。
専門家へ相談する
お寺との話し合いで解決しない場合、国民生活センターや弁護士などの専門家に相談することを検討します。
国民生活センターは消費者の相談を受け付けており、公平な立場でのアドバイスが期待できるためです。
消費者ホットライン「188番」に電話することで、相談窓口を案内してもらえます。
また、弁護士に委任したことで、200万円の請求が10万円に減額された事例も報告されています。
墓じまい代行業者に相談すれば、離檀料の交渉を含むさまざまな手続きを一任できる場合もあります。
専門家や第三者を介することで、落ち着いて話し合いを進めることができるでしょう。
まとめ:離檀料はお世話になったお寺へのお礼としてのお布施

離檀料には法的な支払い義務はないものの、長年お世話になったお寺への感謝を表すために納めるものです。
相場は5万円から20万円程度が一般的ですが、お寺との関係性や地域によって異なります。
離檀を円満に進めるためには、まず親族間で十分に話し合い、お寺へは丁寧に相談することが重要です。
高額な離檀料を請求された場合は、内訳を確認し、減額交渉や専門家への相談を検討しましょう。
離檀は先祖代々のお墓との別れであり、一生に一度あるかないかの重要な決断です。
家族や親族、お寺との関係を大切にしながら、後悔のない選択をすることが何より大切になります。
離檀料トラブルの解決は弁護士がおすすめ
離檀料を巡るトラブルが解決しない場合、法律の専門家である弁護士への相談が最も確実な解決方法となります。
弁護士は離檀料の法的な位置づけを理解しており、適切なアドバイスと交渉が可能だからです。
憲法第20条で信教の自由が認められている以上、離檀を止める権利はお寺にありません。
弁護士が介入することで、お寺側も法的な観点から冷静に対応するようになります。
内容証明の送付や代理交渉によって、短期間で問題が解決するケースも多く見られます。
離檀料トラブルでお悩みの方は、まずは弁護士に相談することを強くおすすめします。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

