お墓参りが困難になり墓じまいを決意した際、お寺から高額な離檀料を請求されるトラブルが増えています。
実は、離檀料に法的な支払い義務はありません。
しかし、支払わなければ埋蔵証明書の発行を拒否されたり、遺骨の引き渡しを拒まれたりするケースも存在します。
本記事では、離檀料の高額請求に直面した際の対処法から、離檀料の相場、表書きの正しい書き方まで、実際のトラブル事例を交えながら詳しく解説します。
墓じまいを円滑に進めるための知識を身につけ、納得のいく形で先祖供養を続けましょう。
目次
高額な離檀料を請求されたら?トラブルを最小限に抑えるために

お寺から相場を大きく上回る離檀料を請求された場合、まず感情的にならず冷静に対応することが大切です。
以下の手順で、段階的にトラブル解決を図りましょう。
離檀料の内訳を確認する
高額な離檀料を提示された際は、まずその内訳を詳しく確認することが重要です。
なぜその金額になるのか、何にいくらかかるのかを明確に説明してもらいましょう。
離檀料の中には、墓石の撤去費用や永代供養料が含まれている場合があるからです。
内訳を確認することで、適正な金額なのか、交渉の余地があるのかを判断できます。
菩提寺、総本山と話し合う
内訳を確認しても納得できない場合は、菩提寺の住職と直接話し合いの場を設けることが必要です。
これまでお世話になった感謝の気持ちを伝えつつ、経済的な事情を正直に説明しましょう。
話し合いで解決しない場合は、そのお寺が属する宗派の総本山に相談する方法もあります。
総本山から指導してもらうことで、問題が解決に向かう可能性があります。
国民生活センターに相談する
お寺との直接交渉が難航する場合、国民生活センター(消費者ホットライン188番)に相談することができます。
国民生活センターでは離檀料に関するトラブル相談を受け付けており、公平な立場からアドバイスをもらえます。
離檀料をめぐる相談件数は年間1,000件前後に上っており、豊富な相談事例が蓄積されているためです。
相談員が状況を整理し、必要に応じて寺院へのあっせんや文書照会を実施してくれます。
弁護士に相談する
法的な対応が必要な場合は、弁護士に相談することを検討しましょう。
弁護士は法律に基づいて代理人として交渉を進めることができ、高額請求の減額交渉や遺骨返還請求訴訟の対応も可能です。
実際に弁護士が介入することで、200万円の請求が10万円に減額されたという事例も報告されています。
弁護士会のADR(裁判外紛争解決手続き)を利用すれば、平均2〜3か月で和解が成立するケースが多いです。
離檀料とは?

離檀料とは、菩提寺の檀家をやめる際に、これまでお墓を守っていただいたことや供養をしていただいたことへの感謝の気持ちとして包むお布施のことです。
しかし近年、「離檀料」という言葉が一般的に使われるようになり、トラブルが増加している現状があります。
お寺への感謝の気持ちとしてのお布施
離檀料は、長年お世話になった寺院への感謝の気持ちを表すためのお布施です。
先祖代々お墓を守り、供養していただいたことに対する謝礼として包むものとされています。
お布施という性質上、本来は金額を明確に定めるものではなく、檀家が自身の気持ちに応じて包む慣習でした。
墓じまいの際には墓石の撤去工事などでお寺の敷地内に入る必要があるため、その手続きへの御礼という意味合いもあります。
寺院の独断で高額請求されるケースも
本来は感謝の気持ちとして任意で包むものであるにもかかわらず、寺院側から具体的な金額を請求されるケースが増えています。
檀家数の減少により寺院の経営が厳しくなっている背景があり、離檀の際に経済的な補填を求める寺院もあるからです。
中には100万円、300万円、700万円といった法外な金額を要求される事例も報告されています。
一方的に高額な離檀料を通告するような対応は、本来のお布施の趣旨から外れていると言えるでしょう。
離檀料の支払いに法的根拠はない
離檀料の支払いについて、法律で定められた規定は存在しません。
墓地使用契約や寺院墓地規則に離檀料の定めがない限り、離檀料について明確な法的根拠はないのです。
日本国憲法第20条では信教の自由が認められており、離檀料の支払いを強制することはできません。
ただし、明確な判例がまだ少ないため、裁判となった場合に相場程度の金額であれば支払いを命じられる可能性も否定できない状況です。
離檀料の相場はいくら?

離檀料には明確な相場が存在しないため、地域や寺院によって金額に大きな差があります。
寺院の考え方、檀家との付き合いの長さ、地域の慣習などによって異なるからです。
墓じまいを行う際には、離檀料以外にも様々な費用がかかることを理解しておく必要があります。
離檀料:5~20万円
離檀料の一般的な相場は5万円から20万円程度とされています。
法要1回分のお布施相場が3万円から5万円程度であることから、その1〜3回分程度が目安と考えられています。
地域性、お寺とのこれまでのつながりの深さ、お寺の格によっても金額は変動します。
100万円を超えるような金額は、一般的に法外な請求と考えられる水準です。
閉眼供養:3~5万円
墓じまいの際には、お墓から魂を抜く閉眼供養(お性根抜き)を行う必要があります。
閉眼供養のお布施相場は3万円から5万円程度とされており、地域や宗派によって若干の差があります。
離檀料とは別に閉眼供養のお布施を包む場合、合計で8万円から30万円程度になることが一般的です。
閉眼供養を省略すると、墓石はただの石になりませんので、必ず行う必要がある儀式です。
お墓の改葬:100~250万円
お墓を別の場所に移す改葬には、墓石の撤去費用や新しいお墓の設置費用など、多額の費用がかかります。
墓石の撤去費用は1平方メートルあたり10万円から20万円程度が相場で、お墓の大きさによって総額が変わります。
新しい納骨先として永代供養を選ぶ場合は30万円から300万円程度、新しくお墓を建てる場合は100万円から200万円程度が必要です。
改葬全体の費用としては、離檀料を含めて100万円から250万円程度を見込んでおく必要があるでしょう。
離檀料を払わないとどうなる?

離檀料には法的な支払い義務がないため、理論上は払わないことも可能です。
しかし実際には、離檀料を支払わない場合に様々な支障が生じる可能性があります。
遺骨の引き渡しを拒否される
離檀料の支払いを拒否した場合、寺院側が遺骨の引き渡しを拒否するケースがあります。
お墓は寺院の敷地内にあるため、寺院の協力なしに遺骨を取り出すことが事実上困難になるからです。
遺骨を人質に取られたような状況に陥り、困難な立場に置かれることがあります。
改葬を希望する場合も、手元供養を希望する場合も、遺骨を引き渡してもらえなければ何もできません。
埋蔵証明書を交付してもらえない
改葬の手続きには、墓地管理者が発行する埋蔵証明書が必要不可欠です。
埋蔵証明書がなければ、原則として自治体から改葬許可証を交付してもらえないため、改葬を進めることができません。
寺院が埋蔵証明書の発行を拒否すると、手続きが完全に止まってしまう事態になります。
ただし、自治体に事情を説明すれば「市町村長が必要と認めるこれに準ずる書面」で代用できる場合もあるため、役所に相談してみる価値はあります。
檀家が離檀する理由

近年、檀家をやめて離檀を選択する家庭が増加しています。
従来の檀家制度が現代のライフスタイルに合わなくなってきているのです。
引っ越し
転勤や就職、結婚などで遠方に引っ越しをすることになり、定期的にお墓参りに行けなくなったという理由で離檀を選択する方が多くいます。
お墓が地方にあり、自分は都市部に住んでいる場合、お墓参りに行くだけで交通費や時間が大きな負担になるからです。
自宅から遠く、今後もお墓参りが困難な状況が続くと判断し、墓じまいを決意する方が増えています。
現在の住まいの近くに改葬することで、より手厚く先祖供養ができると考える方も少なくありません。
年齢によりお墓参りが困難になった
高齢になり、足腰が弱くなったことでお墓参りが物理的に困難になるケースも増えています。
特に山間部や坂道の多い場所にお墓がある場合、高齢者にとっては大きな負担となります。
お墓の清掃や管理作業も年齢とともに難しくなり、墓守としての役割を果たせなくなったと感じる方もいます。
自分の代でお墓の管理が難しくなると判断し、永代供養などへの切り替えを検討する方が多いです。
経済的余裕がなくなった
経済的な理由から、寺院への年間管理費やお布施の支払いが困難になるケースもあります。
失業や収入減、医療費の増加などで家計が圧迫され、檀家としての経済的負担が重くのしかかる状況です。
年間管理費に加えて、法要のたびに数万円単位のお布施が必要になることもあり、継続が難しくなります。
経済的な事情を正直に住職に相談しても理解が得られず、むしろ高額な離檀料を要求されるというトラブルも報告されています。
高額な離檀料を提示されるケース

相場を大きく上回る高額な離檀料を提示される背景には、いくつかの理由があります。
どのような状況で高額請求が発生しやすいのか理解しておきましょう。
お寺の経済状況が良くない
檀家数の減少により、寺院の経営が厳しくなっている場合、離檀の際に経済的な補填を求めることがあります。
寺院は檀家からのお布施や寄付で本堂の維持・修繕、住職の生活費などを賄っているからです。
将来的に見込まれていた年間管理費やお布施の収入が途絶えることになるため、それを一括で回収しようとする動きが出るのです。
約4割の寺院が廃寺になるとも言われる時代において、寺院側の経済的な危機感が高額請求につながっている側面があります。
墓地の管理費を離檀料に含めた
離檀料に、墓地の管理費用や永代供養料など、本来は別項目の費用が含まれている場合があります。
内訳を明示せずに一括で高額な離檀料として提示されることで、金額が膨れ上がるのです。
墓石の撤去費用、永代供養料、閉眼供養のお布施などを分けて計算すれば適正な範囲内でも、まとめて「離檀料」として請求されると高額に見えます。
内訳を詳しく確認することで、実際には適正な金額であることが判明するケースもあります。
檀家の態度が悪い
離檀の意思を一方的に伝えたり、寺院への配慮が不足していたりすると、関係性がこじれて高額な請求につながることがあります。
寺院にとって檀家は単なる契約相手ではなく、宗教的に特別な存在だからです。
事前の相談なく突然離檀を切り出したり、電話やメールだけで済ませようとしたりすると、寺院側を怒らせてしまう可能性があります。
感謝の気持ちを持ちつつ、丁寧に事情を説明する姿勢が、円滑な離檀には不可欠です。
離檀料のトラブル事例

実際に発生した離檀料トラブルの事例を見ることで、どのような問題が起こりうるか理解できます。
国民生活センターには離檀料に関する相談が年間1,000件前後寄せられており、深刻なトラブルも少なくありません。
以下の国民生活センターの具体的な事例から学び、同様のトラブルを避けるための参考にしましょう。
70代女性:700万円請求されたケース
70代の女性が跡継ぎがいないため離檀したいと相談したところ、過去帳に8人の名前が載っているという理由で700万円を請求された事例があります。
先祖代々の遺骨1柱ごとに離檀料を設定し、遺骨の数が多ければ多いほど金額が膨れ上がる計算方法が用いられたのです。
相場の5万円から20万円と比較すると、明らかに不当に高い金額と言えます。
この女性は国民生活センターに相談し、専門家のサポートを受けて交渉を進めることになりました。
80代女性:300万円の離檀料を請求されたケース
80代の女性が自宅から遠く自分も入るつもりはないため墓じまいを申し出たところ、300万円ほどの高額な離檀料を要求されました。
支払えないと伝えると、ローンを組んで支払うよう提案されるという事態にまで発展したのです。
高齢の女性に対してローンを組ませようとする対応は、社会通念上も問題があると考えられます。
この事例も国民生活センターに報告されており、適切な対応を求める相談として受理されています。
離檀料の表書きはどのように書く?

離檀料は奉書紙または白無地の封筒に入れて納めます。
水引は不要で、表書きには「御布施」と筆または筆ペンを使って濃墨で書くのが一般的です。
寺院から「離檀料」や「謝礼」と指定があった場合のみ、その表記を用いることもあります。
表書きの下段中央には、差出人のフルネームまたは「○○家」と記載します。
裏面の左側には名前と住所、右側には「金○萬圓」と包んだ金額を書き、数字は漢数字の旧字体(壱、弐、参など)を使うのがマナーです。
離檀料を渡すタイミングは、閉眼供養が終わった後に、感謝の言葉とともに手渡すのが一般的です。
マナーを守ることで、お寺との関係を良好に保ちながら円満に離檀を進めることが可能になります。
まとめ:最終手段は「遺骨返還請求訴訟」

高額な離檀料を請求され、あらゆる交渉が決裂した場合の最終手段として、遺骨返還請求訴訟があります。
弁護士に依頼して交渉を行い、それでも寺院が応じない場合には、裁判所に訴訟を提起することができるのです。
墓地使用者には信教の自由があり、高額な離檀料を求めて埋蔵証明書を交付しない、遺骨を引き渡さないという対応は、信教の自由を侵害する不法行為となる可能性があります。
実際に訴訟まで至るケースは少なく、ほとんどの場合は交渉段階で解決されています。
ただし訴訟となれば費用も時間もかかるため、まずは国民生活センターや檀家総代、宗派の本山などに相談し、穏便な解決を目指すことが賢明です。
適切な機関に相談し、専門家のサポートを受けながら、冷静に対応を進めていくことが重要です。
お寺との話し合いで解決できない方は…
離檀料の問題でお寺との話し合いが進まず、困っている方は専門家への相談を検討してください。
法的な対応が必要な場合は、弁護士に相談することで代理交渉や訴訟対応も可能になります。
弁護士会のADR(裁判外紛争解決手続き)を利用すれば、比較的短期間で和解が成立することが期待できます。
離檀料は本来、感謝の気持ちを表すためのお布施であり、強制されるものではありません。
適切な相場を理解し、納得できる形で離檀を進めることで、先祖への供養を続けながら新しい供養の形を選択することができます。
困ったときには専門家の力を借りて、円満な解決を目指しましょう。

法律事務所FORWARD 代表弁護士
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士登録から11年が経過し、これまで一つ一つの案件に丁寧に向き合い、着実に実績を積み重ねてまいりました。借金問題解決を強みとしており、今後も皆様と共に前進し、弁護士として的確な法的サポートを提供できるよう努めてまいります。

