「もしかして、給料が全額差し押さえられてしまうのでは…」
と考えたら夜も眠れないですよね。
借金の滞納が続いたとき、最も恐ろしい結末の一つが「給与差し押さえ」です。
この記事では、給与差し押さえの上限額・計算方法・差し押さえを回避する方法を、わかりやすく解説します。
結論、給与が全額差し押さえられることはありません。
- 給与差し押さえの上限額と計算の仕組み
- 税金滞納と借金滞納での違い
- 差し押さえを回避・解除するための具体的な方法
差し押さえを受けても、正しく対処すれば生活を立て直す手段は残されています。
まずは「いくら取られるのか」を正確に知ることが、解決への第一歩です。
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目次
給与差し押さえの上限額はいくら?

給与差し押さえには、法律で明確な上限が定められています。
「給料を全部持っていかれる」というのは誤解で、生活を守るための制限が設けられているのです。
手取りの4分の1が差し押さえ上限(原則)
借金滞納によって給与が差し押さえられる場合、金額の上限は手取り額の4分の1までと法律で定められています(民事執行法第152条1項2号)。
つまり、手取りの4分の3は手元に残ります。
「手取り」とは、給与の額面から所得税・住民税・社会保険料などを差し引いた後の金額のことです。
たとえば手取りが20万円なら、差し押さえられるのは最大5万円。
残りの15万円は必ず受け取ることができます。
ただし、手取りが44万円を超える場合は例外です。
手取りが44万円を超える場合
高収入の方には例外ルールが適用されます。
手取り額が44万円を超える場合、差し押さえの計算方法が変わります。
「33万円を超える部分の全額」が差し押さえ対象となります(民事執行法施行令第2条1項1号)。
| 手取り額 | 適用ルール | 差し押さえ額 |
|---|---|---|
| 44万円以下 | 手取りの4分の1 | 最大11万円 |
| 44万円超 | 手取りから33万円を引いた全額 | 33万円超の部分 |
手取りが多いほど生活費は確保できるはず、という考え方にもとづいた規定です。
手取りが50万円なら、50万円から33万円を引いた17万円が差し押さえの対象となります。
4分の1(12.5万円)よりも多い金額が取られる点に注意が必要です。
ボーナス・退職金も差し押さえの対象
「月給さえ何とかなれば」と思っている方も多いですが、ボーナスや退職金も差し押さえの対象になります。
ボーナスについては月給と同じ計算方法が適用され、手取りの4分の1(または33万円超の部分)が差し押さえられます。
退職金については、手取りの4分の1までが差し押さえ対象です(民事執行法第152条2項)。
差し押さえ命令が出た後にボーナスや退職金が発生した場合も、自動的に差し押さえの対象に含まれます。
一度差し押さえが始まると、借金が全額回収されるまで毎月継続するため、早期の対処が重要です。
給与差し押さえの計算例

ここでは、実際にいくら差し押さえられるのかを具体的な数字で確認します。
「自分の場合はどうなるのか」をイメージしやすくするために、代表的なケースをまとめました。
手取り20万円・30万円のケース
手取り額が44万円以下の場合、差し押さえ額は「手取りの4分の1」で計算します。
| 手取り額 | 差し押さえ額(上限) | 手元に残る金額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 5万円 | 15万円 |
| 30万円 | 7万5,000円 | 22万5,000円 |
手取り20万円で生活している方にとって、5万円の減額は家計に大きく響きます。
家賃・食費・光熱費を払いながら生活するのは、かなり厳しい状況です。
「それでも生活できない」という場合には、後述する「差押禁止範囲変更の申立て」という手段があります。
手取り44万円超・50万円のケース
手取りが44万円を超えると、差し押さえの計算方法が切り替わります。
手取りが高いほど差し押さえ額は増え、手元に残る金額は「33万円」で固定されます。
手取り50万円の場合、「50万円 − 33万円 = 17万円」が差し押さえ対象です。
| 手取り額 | 差し押さえ額 | 手元に残る金額 |
|---|---|---|
| 44万円 | 11万円(4分の1) | 33万円 |
| 50万円 | 17万円(33万円超の全額) | 33万円 |
| 60万円 | 27万円(33万円超の全額) | 33万円 |
差し押さえが長引けば、高収入であるほど短期間で借金が回収されるとも言えます。
養育費滞納の場合は2分の1まで差し押さえられる
養育費や婚姻費用を滞納した場合、差し押さえできる上限が手取りの2分の1まで拡大されます(民事執行法第152条3項)。
子どもの生活を守るために、通常の借金より厳しいルールが設けられているためです。
たとえば手取りが30万円なら、最大15万円が差し押さえられる計算になります。
なお、手取りが66万円を超える場合は「33万円を超える全額」が差し押さえ対象です。
養育費の未払いは差し押さえのリスクが特に高いため、支払いが難しい状況なら早めに家庭裁判所や専門家に相談することを検討してください。
税金滞納の場合は4分の1以上になることがある

「借金の差し押さえは4分の1まで」と説明しましたが、税金の滞納は別のルールで計算されます。
税金滞納の差し押さえについて、正しく理解しておきましょう。
税金差し押さえは裁判所なしで実行される
一方、住民税や国民健康保険料などの税金の滞納では、裁判所の許可なしに差し押さえが実行されます。
税務署や地方自治体は、督促状を送付してから10日が経過すると、直接差し押さえを行う権限を持っています。
つまり、訴訟や裁判所からの通知なしに、ある日突然給与が差し押さえられる可能性があります。
税金の滞納は「まあ後でいいか」と後回しにしがちですが、借金より差し押さえのスピードが速い点に注意が必要です。
税金滞納の差し押さえ額の計算方法
税金滞納の場合、差し押さえ禁止額は以下の①〜④を合計した金額です(国税徴収法第76条第1項)。
- ①:所得税・住民税・社会保険料などの法定控除額
- ②:本人分の生活費:月10万円
- ③:扶養家族1人につき月4万5,000円
- ④:①〜③を差し引いた残額の20%
たとえば額面30万円・単身者の場合を計算してみます。
①法定控除が6万円とすると、②10万円を差し引き、④残額の20%(2万8,000円)を差し引くと、差し押さえ額は約7万6,000円になる計算です。
借金滞納の場合の差し押さえ上限(7万5,000円)とほぼ同じですが、家族構成によっては差し押さえ額が大きく変わります。
税金は債務整理しても免除されない
「自己破産すれば税金も帳消しになる」という誤解がありますが、これは正しくありません。
税金・社会保険料・罰金などは「非免責債権」と呼ばれ、債務整理をしても支払い義務は免責されません。
自己破産で借金がゼロになっても、滞納した住民税や国民健康保険料は支払い続けなければなりません。
ただし、借金の返済で税金が払えなくなっているケースでは、債務整理で借金を整理することで税金の支払いに充てる余裕が生まれることがあります。
税金の滞納がある場合は、国税局や市区町村の窓口に相談することで、分割納付や猶予の制度を利用できる場合があります。
給与が差し押さえられるとどうなる?

実際に給与差し押さえが始まると、生活面・精神面のさまざまな影響が出てきます。
「最悪の事態」を想像してパニックになる前に、実際に何が起きるのかを正確に把握しておきましょう。
差押命令は勤務先に直接届いてしまう
給与差し押さえが決定すると、裁判所から「債権差押命令」が勤務先(会社)に直接送られます。
つまり、会社の経理担当者や上司に借金問題が知られてしまうのです。
「債権差押命令」…差し押さえ分の給与を従業員本人に支払うことが法律で禁止される命令。
実際に差し押さえを経験した方の声をご紹介します。
「差押命令が会社に届いた日、経理の担当者に呼ばれて事情を聞かれました。上司にも話が伝わって、正直、職場にいるのがつらくなりました。
あの瞬間が一番きつかった」(30代・男性・会社員)
精神的な負担は非常に大きく、差し押さえになる前に手を打つことが重要です。
解雇されることは基本的にない
「差し押さえになったら会社をクビになるのでは」と心配される方も多いです。
しかし、給与差し押さえを理由とした解雇は基本的にできません。
差し押さえを受けたという事実だけでは、就業規則の解雇事由に該当しないケースがほとんどです。
ただし、会社によっては居心地が悪くなったり、昇進・評価に影響が出たりする現実的なリスクはあります。
解雇されることはなくても、職場での関係性に影響が出ることは覚悟しておいたほうがよいでしょう。
差し押さえは完済まで毎月続く
給与差し押さえは1回で終わりません。
借金が全額回収されるまで、毎月継続して差し押さえが行われます。
たとえば借金が100万円で毎月5万円が差し押さえられる場合、単純計算で20ヶ月(約1年8ヶ月)差し押さえが続きます。
さらに遅延損害金も加算されるため、実際にはもっと長引くことも少なくありません。
ボーナスや退職金が発生した場合も、そのタイミングで差し押さえが行われます。
給与差し押さえになるまでの流れ

給与差し押さえは、ある日突然起きるわけではありません。
滞納から差し押さえまでには一定の流れがあり、途中で対応できるタイミングが複数あります。
滞納から差し押さえまでの期間の目安
借金滞納の場合、一般的に次のような流れで差し押さえに至ります。
- 滞納開始:催促の電話・督促状が届く
- 61日以上または3回以上:一括返済の請求
- 滞納3〜6ヶ月:裁判所への訴訟または支払督促の申立て
- 判決・確定:強制執行の申立てが可能になる
- 差押命令:勤務先・自宅に届く
滞納開始から差し押さえまで、最短でも3〜6ヶ月程度かかることが多いです。
ただし、税金の滞納は督促状の発送から10日で差し押さえが可能なため、借金よりはるかにスピードが速い点に注意してください。
裁判所から書類が届いたら要注意
「支払督促」や「訴状」が届いた時点で、差し押さえが現実に近づいているサインです。
裁判所から書類が届いても放置すると、そのまま判決が確定して強制執行に移行します。
書類が届いた段階で専門家(弁護士・司法書士)に相談すれば、差し押さえを回避できる可能性があります。
「裁判所からの手紙は怖くて開けられなかった」という方も多いですが、開封して内容を確認することが最初の対処です。
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差し押さえ前に打てる対策がある
差し押さえになる前の段階であれば、取れる手段は複数あります。
任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理によって差し押さえを未然に防ぐことができます。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、受任通知(介入通知)が債権者に送られます。
受任通知が届いた後は、債権者から直接の督促が禁止されます。
差し押さえが始まってしまった後は選択肢が限られますが、差し押さえ前なら任意整理でも対処できるケースが多くあります。
給与差し押さえを回避する方法

給与差し押さえを避けるための方法は、大きく3つあります。
差し押さえ前か後かによっても、選択できる手段が変わってきます。
任意整理で回避できる可能性がある
任意整理とは、裁判所を通さずに債権者(お金を貸した相手)と直接交渉して、借金の返済条件を見直す手続きです。
差し押さえが始まる前の段階であれば、任意整理で回避できる可能性があります。
弁護士や司法書士に依頼すると、受任通知が送られ、その後は催促がストップします。
交渉によって利息のカットや分割払いの延長ができれば、毎月の返済額が大幅に下がることもあります。
ただし、すでに差し押さえが実行されている場合、任意整理だけでは差し押さえを止めることは難しいです。
差し押さえが始まってしまった場合は、次に紹介する個人再生や自己破産の検討が必要になります。
個人再生すると強制執行が中止される

個人再生は、裁判所に申し立てることで借金を大幅(概ね5分の1程度)に減額し、3〜5年で返済する手続きです。
個人再生の手続きが開始されると、強制執行(差し押さえ)が中止されます。
差し押さえが始まってしまった後でも、個人再生の申立てによって止められる点が大きなメリットです。
住宅ローンを組んでいる場合でも「住宅資金特別条項」を使えば、自宅を残しながら手続きを進めることができます。
自己破産でも差し押さえを止められる
自己破産は、裁判所の免責許可を受けることで、税金などを除いた借金の返済義務がゼロになる手続きです。
自己破産の手続き開始決定が出ると、差し押さえの効力が失われます。
すでに給与差し押さえが実行されていても、自己破産を申し立てることで止めることができます。
デメリットとして、一定の財産は処分対象になること、信用情報に登録されてしばらくの間はローンやクレジットカードの利用が難しくなることがあります。
ただし、「生活に必要な最低限の財産」は保護されるため、自己破産後も普通の生活を続けることは可能です。
手取りが少なく生活できない場合の対策:差押禁止範囲変更

法律上の上限(4分の1)の差し押さえを受けても、生活が成り立たないケースがあります。
そのような場合に使える手段が「差押禁止範囲の変更申立て」です。
差押禁止範囲の変更申立てとは?
「差押禁止範囲の変更申立て」とは、差し押さえを命令した裁判所に対して、差し押さえの範囲を減らすよう申し立てる手続きです(民事執行法第153条)。
手取りの4分の1が差し押さえられると生活が維持できないという場合に、より多くの給与を手元に残せるようになる可能性があります。
この申立ては、差し押さえを受けた本人(債務者)が行うことができます。
一方、債権者側も差し押さえ禁止の範囲を減らす申立て(逆の申立て)ができる点も覚えておきましょう。
申立てが認められるとどうなるか
申立てが裁判所に認められると、差し押さえの対象となる金額が変更されます。
たとえば「手取りの4分の1ではなく10分の1だけを差し押さえる」といった形で、手元に残せる金額が増えます。
申立てが認められるかどうかは、生活費・家族の人数・収支の状況など、具体的な事情によって判断されます。
必ず認められるとは限らないため、申立てをする際は弁護士や司法書士のサポートを受けることをおすすめします。
申立ての手続きと注意点
申立ては、差押命令を発令した裁判所(執行裁判所)に対して行います。
申立てに必要な主な書類は次のとおりです。
- 申立書(裁判所所定の書式)
- 家計の収支がわかる資料(給与明細・家賃契約書など)
- 家族の状況がわかる書類(戸籍謄本など)
申立ての際には、「差し押さえを受けると生活が維持できない」という事実を具体的に証明することが重要です。
手続きは複雑なため、弁護士や司法書士に相談してサポートを受けながら進めることが現実的です。
給与差し押さえについてよくある質問

給与差し押さえは全額取られることはある?
原則として、給与が全額差し押さえられることはありません。
民事執行法によって、手取り給与の4分の3は差し押さえ禁止とされています。
ただし、給与が銀行口座に振り込まれた後に預金口座を差し押さえられた場合、預金は全額が対象になるため注意が必要です。
振込直後に口座の差し押さえが行われると、実質的に給与相当額が全額失われることがあります。
(給与の差し押さえ(4分の1上限)と預金の差し押さえ(上限なし)は別の手続き)
給与差し押さえになったら転職で逃げられる?
一時的に止めることはできます。
差押命令は「現在の勤務先」に対して出されるため、転職先の勤務先には改めて差押命令が届くまでタイムラグが生じます。
ただし、転職は根本的な解決策にはなりません。
債権者が新しい勤務先を調査して再度差し押さえを申し立てることができるからです。
また、頻繁に転職を繰り返すと収入が不安定になり、生活がさらに厳しくなるリスクもあります。
差し押さえを本当に解決するには、借金の根本的な整理が必要です。
差し押さえされると家族にもバレる?
同居している家族に郵便物を見られてしまえばバレます。
差押命令は、裁判所から「勤務先」と「債務者本人」の住所に送られるからです。
また、勤務先に差押命令が届くため、会社には必ず知られます。
家族や職場への影響を最小限にするためにも、差し押さえになる前の段階で専門家に相談して手を打つことが重要です。
まとめ:給与差し押さえの上限を理解し、今すぐ対策を

給与差し押さえの上限は、借金滞納の場合は手取りの4分の1です。
全額取られることは法律上禁止されており、生活のための最低限の収入は守られます。
ただし、差し押さえが始まると毎月継続し、ボーナスや退職金も対象になります。
会社にも知られてしまうため、精神的な負担は決して小さくありません。
重要なのは、差し押さえになる前に対処することです。
「どうすればいいかわからない」という方も、まずは弁護士への無料相談から始めてみてください。
あなたの状況に合った解決策を、一緒に見つけましょう。
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弁護士法人FORWARDジャパン 代表
監修者:保坂 康介(ほさか こうすけ)
弁護士法人FORWARDジャパン代表。心理カウンセラーの資格を持つ「カウンセラー弁護士」。
個人の債務整理、企業法務などの複雑な交渉案件を数多く手掛けている。単なる法的解決に留まらず、依頼者の利益を最大限追及する。

