顧問弁護士に社員の相談はどこまでOK?範囲と注意点を解説

【結論】顧問弁護士には「会社としてどう対応すべきか」という視点であれば、社員に関する相談ができます。

ハラスメント対応、労務管理、人事対応などは相談範囲に含まれますが、社員個人の私的な法律問題(離婚・相続・借金など)や、会社と社員の利害が完全に対立している場合は相談の範囲外となります。

社員の相談、顧問弁護士に聞いていいのか迷っていませんか?

「社員からハラスメントの相談を受けたが、顧問弁護士に相談していいのか分からない」
「社員同士のトラブルは、会社がどこまで関与すべきなのか判断が難しい」

中小企業の経営者や人事担当者の方から、このようなご相談をよくいただきます。

結論から言えば、社員が関係する相談でも、顧問弁護士に相談できるケースは多くあります。
ただし、相談の仕方や範囲を誤ると、かえってトラブルを大きくしてしまうこともあります。

この記事では、顧問弁護士に社員の相談をしてよい範囲、注意すべきケース、相談時のポイントを分かりやすく解説します。

顧問弁護士は「社員の弁護士」ではなく「会社の弁護士」

まず大前提として押さえておきたいのが、顧問弁護士の依頼者は「会社」であるという点です。

顧問弁護士は、会社の利益を守り、会社が法的に適切な判断・対応を行えるよう助言することを役割としています。

そのため、社員個人の代理人として行動することはできませんが、「会社として社員問題にどう対応すべきか」という相談は、正当な顧問業務の範囲に含まれます。

顧問弁護士に相談してよい「社員に関する相談」の範囲

社員が関係しているからといって、すべての相談がNGになるわけではありません。
以下のような内容は、顧問弁護士に相談して問題ありません。

労務管理・人事対応に関する相談

相談内容対応内容
ハラスメント相談への初期対応会社の調査義務、聞き取りの進め方、記録の残し方について助言を受けられます
問題社員への指導・注意の方法法的に適切な注意指導の進め方、文書化の方法を確認できます
配置転換・懲戒処分の進め方処分の妥当性、手続きの適法性を事前に検討できます
退職勧奨の適法性違法な退職強要にならないための進め方を相談できます

トラブル予防を目的とした相談

相談内容対応内容
社内規程や就業規則の運用方法既存の規程を実際の場面でどう適用すべきか確認できます
社員対応のフロー確認ハラスメント対応、懲戒手続きなどの社内フローが適法か検証できます
記録の残し方・証拠管理の方法将来の紛争に備えた適切な記録方法を学べます

社員対応に関する経営判断の相談

相談内容対応内容
この対応は法的に問題がないか計画している対応の適法性を事前確認できます
将来的な紛争リスクはないか労働審判や訴訟に発展する可能性を事前に評価できます

「社員個人のため」ではなく、「会社としてどう対応すべきか」という視点であれば、相談できる範囲は非常に広いと言えます。

注意が必要なケース|顧問弁護士への相談に慎重になるべき場面

一方で、次のようなケースでは注意が必要です。

社員個人の私的な法律相談

  • 離婚、相続、借金問題など
  • 業務と無関係な個人トラブル

これらは顧問契約の範囲外となるのが一般的です。

会社と社員の利害が完全に対立している場合

  • すでに訴訟・労働審判が想定されている場合
  • 社員が「会社を訴える」と明言している場合

このような場合、顧問弁護士は会社側の立場で対応します。

社員から直接、顧問弁護士に相談させたい場合

顧問弁護士に直接社員を相談させることは、利益相反の問題が生じる可能性があるため、原則として避けるべきです。

顧問弁護士は会社の代理人であり、会社と揉めている内容や、会社を相手方とする相談について、社員個人の立場で助言することはできません。

ただし「私的な相談」としての弁護士紹介はしていただくのは、OKです。

この場合は、

  • 会社案件とは完全に切り離して対応すること
  • 顧問契約の相談時間・業務範囲には含まれないこと

を明確にしたうえで紹介するという形を取るのが一般的です。

会社としては、

  • 顧問弁護士は「会社の弁護士」であること
  • 会社と対立する内容は相談できないこと
  • 私的な相談については紹介という形になることがある

この点を社員にあらかじめ説明しておくことで、不要な誤解やトラブルを防ぐことができます。

よくある社員相談の具体例|相談できる範囲の判断基準

相談内容顧問弁護士への相談理由・ポイント
ハラスメント相談があった場合
相談可能
会社としての初動対応・調査方法を相談するのはOK。適切な対応で二次被害を防げます。
問題社員への対応を検討したい場合
相談可能
注意・指導・懲戒の進め方を相談するのはOK。法的に適切な手順を踏むことが重要です。
退職・解雇・未払い残業代が絡む場合
必ず相談すべき
紛争に発展しやすい案件。必ず事前に顧問弁護士へ相談すべきケースです。
社員から「弁護士に相談したい」と言われた場合
注意が必要
会社の顧問弁護士ではなく、社員個人で別の弁護士を探してもらうのが原則です。
社員個人の離婚・相続・借金問題×
相談不可
顧問契約の範囲外。会社業務と無関係な個人的法律問題は対象外です。
※「私的な相談」としての弁護士紹介はしていただくのはOK

顧問弁護士に社員関連の相談をする際のポイント3つ

顧問弁護士への相談を有効にするため、以下の点を意識しましょう。

1.事実と感情を分けて整理する

「誰が・いつ・何をしたのか」を客観的にまとめることが重要です。感情的な評価(「あの社員は問題がある」など)ではなく、具体的な事実(「○月○日、△△という発言があった」)を整理して伝えましょう。

2.相談の目的を明確にする

「何を判断したいのか」「どこまで会社として対応すべきか」を整理してから相談すると、助言の質が高まります。漠然と「困っている」ではなく、「懲戒処分の可否を判断したい」など具体的な目的を示すことが効果的です。

3.初期段階で相談する

トラブルは初動対応が最も重要です。問題が大きくなる前に相談することで、リスクを最小限に抑えられます。「もう少し様子を見てから」と判断を先延ばしにすると、対応の選択肢が狭まってしまいます。

顧問弁護士と連携することで社員トラブルは防げる

社員トラブルは、対応を誤ると労働審判・訴訟に発展したり、会社の信用を損なったりといった大きなリスクにつながります。

顧問弁護士と日常的に連携していれば、対応方針がブレない、経営判断に法的裏付けが持てる、後から不利になる対応を避けられる、というメリットがあります。

まとめ|社員の相談は「会社としての対応」を軸に考える

社員が関係する相談であっても、「会社としてどう対応すべきか」という視点であれば、顧問弁護士に相談できる範囲は広いのが実情です。

迷ったときこそ、問題が小さいうちに相談することが重要です。

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代表弁護士 保坂 康介(法律事務所FORWARD)

秋田県秋田市出身、1977年12月生まれ

明治大学政治経済学部卒業、旧司法試験合格(2007年)、弁護士登録(2009年、第一東京弁護士会)

「争い・トラブルを好まず、紛争になる前の話し合いによる解決を大切にする」ことを信条としています。

2014年10月に法律事務所FORWARDを開設、2025年3月に現在地(渋谷区)へ移転

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