契約書リーガルチェック5つのポイント

はじめに

会社を経営していると、クライアント企業、外注企業、提携先企業その他の事業者との間で様々な取引が生じます。

取引=「契約」です。契約はもちろん口約束でも成立しますが、仮にトラブルになってしまった際に備え、どのような契約内容であるかを証拠上明らかにするために契約書を結ぶことが多いでしょう。

現在の日本の法制度では、公の秩序、善良の風俗あるいは強行法規に反しない限りはどのような契約を結んでも有効であるという「契約自由の原則」の建前が採られています。

でも、公の秩序、善良の風俗あるいは強行規定に反しない内容でも、自社にとって不利益な内容での契約は成り立ち得ます。

例えば、ある会社から年利10%でお金を借りる契約を結ぶとします。
法律上定められているのは年3%の利率と定められていますが(2020年の民法改正に伴い、民法上の法定利率は年3%となり、商法上の法定利率は廃止となりました。)、これと違う利率を定めることは公の秩序、善良の風俗、強行法規に反しない範囲で契約当事者間の自由であり、それも有効だとされるのです。

法律上定められた年利3%と比較すると、年利10%で借りることの不利益がお分かりになるかと思います。

民法や商法その他の法律で定められている規定は、お互いに契約条件を定めていなかった場合に適用される規定ですが、当事者間でどのような契約条件で締結するかを決めるうえで一つの指標にもなるものです。

そのため、自社にとって不当に不利益な契約とならないために契約書のリーガルチェックを行う意味が出てくるのです。
もちろんその不利益を分かったうえで契約を結ぶことも自由ではあるのですが。

以下では、契約書のリーガルチェックにおいて注意するべき5つのポイントを紹介していきます。

リーガルチェック5つのポイント

1、この契約で自分がどのような権利を持つことになるのかを検討

まず、自身の会社がその取引でどのような権利を持つことになるのかをしっかりと認識しなくてはなりません。

その権利が不当に狭められていないか、あるいは普通は備わっていて当たり前の権利がその契約書で認められていないといったことはないかという点を検討することが必要不可欠です。

例えば、仕入れた物品に欠陥があったときにその修補や追完をする権利が通常認められて当然なのに、契約書上でその権利が認められていない場合には、相手方当事者へ確認する等の対処が必要となります。

2、この契約で自分がどのような義務を負うことになるのかを検討

次に、自身の会社がその取引でどのような義務を負うことになるのかについても確認をする必要があります。

自社が負うことになる義務が、その類型の契約で通常追うとされる義務よりも重い義務となっていないか、追う必要のない義務を負わされていないかを確認する必要が出てくるのです。

例えば、売買の対象となる物品が、契約の締結後にどちらの当事者の責任にもすることのできない理由で滅失してしまった場合、買主は代金の支払の拒絶や契約の解除をすることが民法で定められていますが、その場合でも代金を支払わなくてはならないと契約書で定められているといった場合です。

3、その取引類型において法律上記載するべきとされている条項が契約書にしっかり盛り込まれているか確認

特定の業種・業態における取引形態においては、その契約書に盛り込むべき内容が法律で定められていることがあります。
その条項が契約書に盛り込まれていない場合には、その契約書の有効性や成立が認められなかったり、相手方からの解約が常に認められるなどといった事態も生じ得ますので、この点はしっかりと確認をする必要があります。

例えば、訪問販売においては契約書に記載するべき事項が法律で定められています。その記載事項に漏れがある契約書で契約を締結しても、消費者からいつまでもクーリングオフによる解約が可能となるといった事態になりかねませんので注意が必要です。

4、契約内容が関係法律に違反していないかどうか、公の秩序・善良の風俗に反しないかどうかを検討

3と重複するかもしれませんが、契約書の条項が自社の業種・業態に関連する法律に違反した内容となっていないかどうかを確認することが肝要です。

関連法律に違反する内容が契約書に定められている場合、当然に契約書の有効性に問題が出てきますし、そもそも自社に対する社会的信用まで損なわれてしまいますので注意が必要です。

5、契約書の条項が、明確に記載されているかどうかを検討

契約書の条項は、複数の解釈ができるような曖昧な表現であってはなりません。

後日、その条項をめぐって当事者間で法的トラブルになりやすいですし、仮にその条項の解釈が争点となるような訴訟に発展した場合に裁判所がどのような判断をするか予想がつかないからです。

契約締結の際には「まさかそのようなことにはならないだろう」と思われるかもしれませんが、後日のトラブルを最大限に回避するためにも細心の注意を払うことが肝心です。

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